IS指導者バグダディ氏の死、「世界は安全」になったのか?

米国防総省 via AP

 トランプ大統領は10月27日、米軍がシリア北西部イドリブ県で行った軍事作戦の結果、イスラム過激派組織イスラム国(IS)の指導者であるバグダディ容疑者が死亡したと発表した。バグダディ容疑者の死亡はこれまで何回か発表されてきたが、殺害現場でDNA鑑定も行われ、バグダディ容疑者本人と確認されたという。トランプ大統領は、「昨夜、米国は世界最悪のテロ組織のリーダーを殺害した。世界はずっと安全な場所になった」と作戦の意義を強調した。しかし、本当に世界は安全な場所になったのか。

◆アピールポイントとしてのバグダディ殺害
 まず、筆者は、トランプ大統領が果たしてどこまでISやバグダディ容疑者に対する知識があるのか疑問を感じる。おそらく、27日の発表の際、トランプ大統領は、「来年11月の大統領選での勝利に向けていいアピールポイントになった!」くらいにしか思っておらず、とりあえず人にわかりすい成果をより多く作ることに固執しているのではないだろうか。来年の選挙戦の際、「俺はバグダディを殺害して米国を安全にした」などと支持者に強調する姿は想像に難くない。

◆バグダディ殺害以前から弱体化しているIS
 トランプ大統領は、バグダディ殺害によって安全になったとアピールしたが、
それ以前からISの弱体化は進んでおり、「今回の殺害によって弱体化が顕著に進む」というわけではない。確かに、ISにとって大きな分岐点となっただろうが、これによってIS戦闘員たちが戦闘モードを再び高め、最盛期のように世界を驚かすことはないだろう。そんなことができる状況にはないのだ。

 ISは31日、バグダディ容疑者の死亡を認め、アブイブラヒム・ハシミ・クラシ(Abu Ibrahim al-Hashim al-Quraishi)という人物が後継者になったと発表した。ISは声明で、米国への報復を示唆した。

 すでにIS支持者たちのなかでは、クラシ氏へ忠誠を誓う動きが見られているが、今後各地のIS支部も新たな動きを見せてくることだろう。だが、それによって一部でテロが活発化する可能性はあるが、ISが最盛期のような勢いになることはない。新しい指導者が最初の声明で米国への報復を宣言したとのことで、筆者には「アルカイダ化するIS」が目に映る。ISはもともと、それほど欧米諸国への攻撃意思を示していなかった。

Text by 和田大樹