IS指導者バグダディ氏の死、「世界は安全」になったのか?

米国防総省 via AP

◆名前に執着していると対策を見誤る
 ISが現場でもネット上でも衰退傾向にあるのは間違いないとしても、「ISの弱体化=テロの脅威が収まる」と理解すると、それはテロリストの思うツボだ。

 また、これは長年の米国のテロ戦略の誤りでもあると思われるが、「対アルカイダ」「対IS」など名前を意識したテロ戦略を進めても、テロの脅威は収まらない。脅威の実態は、ISやアルカイダではなく、そういったイスラム過激派が掲げるサラフィー・ジハード主義である。ISやアルカイダもサラフィー・ジハード主義を掲げる一つの組織、ブランドであり、サラフィー・ジハード主義を掲げる組織や個人を束ねたネットワークの前衛でしかない。

 よって、国際社会はISやアルカイダにどう対峙するのかではなく、そういったサラフィー・ジハード主義を掲げる組織や個人にどう対応するのかという全体的、中長期的な戦略を考えていくことが今後さらに重要になる。

 米国・ワシントンに拠点を置く戦略国際問題研究所(CSIS)は2018年11月、
アルカイダやイスラム国などグローバルジハードを標榜するイスラム過激派は、世界に67組織(9.11時の約1.8倍)存在し、そういった組織に参加する戦闘員は、中東やアフリカ、南アジア、東南アジアなど各地域に合計で10万人〜23万人いるとする統計を公表した。

 また、最近でも、米国は近年シリア北西部で勢力を拡大するアルカイダ系組織「フッラース・アル・ディン(Hurras al-Din)」の拠点に空爆を実施するなど、新たなジハード主義組織の台頭にも警戒心を強めている。

 ISはもともとイラクのアルカイダ(AQI)を由来としているし、ISとアルカイダは最終的な目標は同じで、方法論で対立関係にあったが、両者の接近や合併というシナリオも世界中のテロ研究者のなかでは議論されている。

 我々は、ISやアルカイダではなく、もっと視野を広く、中長期的な観点からテロの問題を考える必要がある。

Text by 和田大樹