中国は「先進国」、貿易ルールの変更を 豪首相が主張

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◆数字上は先進国 実態は超格差経済
 国の豊かさを測る場合、一人当たりの収入を使うのが一般的な原則だが、多くの経済学者が、一人当たりの国民総所得(GNI)が1万2000ドル(約128万円)を超えると、「高所得国」とみなしている。世界銀行によれば、2018年の中国の一人当たりのGNIはすでに1万8140ドル(約194万円)となっており、この定義だと中国は途上国とは言えない。

 しかし、オーストラリア国立大学のジェーン・ゴレー教授は、北京、上海、広州などの沿岸部の大都市を見れば中国が途上国というのは難しいが、5億人が暮らす農村部は比べ物にならないほど貧しいと指摘する(news.com.au)。豪モナッシュ・ビジネス・スクールのジョバンニ・ディ・リエト氏も、中国は中所得国でさえないと述べ、問題は富の分配が不平等なことだと豪ニュースサイト『ニュー・デイリー』に語っている。

 前出のゴレー氏は、中国には、そもそもルールは西側諸国が作ったもので自分たちはそのルールに従っているという認識があると説明する。そのルールを変えろと言えば、中国は西側が自分たちの利益のために恣意的な変更を加えようとしていると受け止める。よって西側も中国に対しやや不誠実なのではないかとしている(news.com.au)。

◆モリソン発言に中国警戒 経済問題が政治に波及?
 モリソン首相のコメントは豪州国内で物議を醸しているようだ。ロイターは、同首相は中国に対し経済の改革と対米貿易戦争の終結を求めてきたが、中国のWTOステータスについて公的な立場で意見を述べることはこれまでなかったとしている。

 野党労働党の党首アンソニー・アルバニーズ氏は、このようなメッセージをアメリカから送ることが果たして建設的だったのだろうかと述べ、中国は先進国という考えにも疑問を呈した(news.com.au)。一方テクノロジー・シドニー大学のジェームス・ローレンスソン氏は、オーストラリアは中国と二国間自由貿易協定を締結しており、WTOのルールに変更があっても大きな影響はないとしている(ニュー・デイリー)。

 モリソン氏は、訪米でトランプ大統領との良好な関係をアピールし、米豪の友情は次の100年も続くとだろうと述べ、同盟関係の強さを強調した。これに対し、中国政府系の環球時報は、米豪同盟の強化はオーストラリアとアジア諸国の軍事的政治的対立を招くとし、100年の友情ではなく100年の孤立につながるという研究者ユー・レイ氏の意見を掲載している(news.com.au)。

 前出のリエト氏は、この件で中国を怒らせてしまえば、経済ではなく政治的不仲につながる可能性もあるとし、オーストラリアの国益を考えれば、リスクなしとは言い切れないとしている(ニュー・デイリー)。

Text by 山川 真智子

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