北朝鮮の新型潜水艦、その脅威とは? 核ミサイル複数搭載、日本海で活動……専門家分析

Ahn Young-joon / AP Photo

◆「新型」ではない可能性
 北朝鮮は70年代に旧ソ連軍の旧型艦を中国経由で大量に入手しているほか、90年代にも複数隻を旧ソ連から直接調達している。後者の一部はゴルフ2型潜水艦と呼ばれるもので、北朝鮮はこれをミサイル発射管3基を搭載可能な仕様に改造している。ただ、これまで実際の運用には至っていない。ポピュラー・メカニクス誌は、今回「新型艦」として公開された艦体がこのゴルフ2型潜水艦に類似していると指摘する。旧型であるゴルフ2型の技術を取り入れ、新型艦として公表した可能性は拭えない。

 米保守派メディアのワシントン・エグザミナー誌は、ゴルフ2型の原型となったロメオ級潜水艦に手を加えたものではないかとの議論を展開している。両種の写真を解析した結果、船首・船尾部ともに類似したパーツが複数箇所に確認された。ただし旧型の転用であったとしても、敵の警戒網をかいくぐって作戦を展開できる潜水艦は危険な存在だ。核保有国である北朝鮮が複数のミサイルを発射可能な艦体を手にしたことで、朝鮮半島の情勢は一気に変化する可能性がある、と同誌は警戒を強めている。

◆北の狙いは?
 新型艦はアジアへの脅威となり得るが、今回の視察および新型艦の公開は、直接的にはアメリカとの交渉材料を意図したものと見られる。現在アメリカとの間で行われている非核化交渉は、北朝鮮にとって経済回復への希望だ。WSJは、停滞する交渉に北朝鮮は苛立ちを募らせている、と指摘する。また、安全保障の専門家は、交渉決裂の場合は強硬手段も辞さないという態度をアメリカにアピールする目的があると分析しているようだ。一方、アメリカのトランプ大統領は7月22日、すでに二国間で書簡の交換を進めているものの、実務レベルでの協議再開に向けた日程は未定だと明かしている。北朝鮮側の用意が整っていないというのがトランプ氏の立場だ。

 ただし今回の視察行為は、必ずしもアメリカに対する威圧を意図していないと捉える向きもある。米UPI通信は北朝鮮に詳しいアナリストの分析として、北朝鮮国内に向けた威容の誇示が目的だとの見方を伝えている。マイク・ポンペオ米国務長官は7月21日、北朝鮮側はすでに公式文書のなかで非核化を約束しているとも述べている。新型潜水艦公開に込められた北の真意については、見方が別れている状態だ。

Text by 青葉やまと