中国が南太平洋を狙う理由 フランス、オーストラリアが警戒強める

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◆中国が南太平洋を重視する理由
 ではなぜ、中国は南太平洋を重視するのか。これには少なくとも2つの理由がある。

 まず、台湾の存在だ。現在、台湾と国交を持つ国は世界に17ヶ国しかないが(昨年にはドミニカとエルサルバドル、ブルキナファソが台湾と国交を断絶)、そのうちの6ヶ国が南太平洋の島国だ。よって、北京としてはそれだけでも南太平洋にテコ入れする政治的理由がある。中国にとって南太平洋でのプレゼンスを強化し、国交樹立を稼げることは、経済だけでなく、政治的な意義も非常に大きい。

 また、軍事戦略上の背景もある。中国は、九州から沖縄、台湾、フィリピンへと伸びる第1列島戦を絶対的な防衛ラインとし、いずれは伊豆半島から小笠原諸島、サイパン、グアムなどへ伸びる第2列島線まで進出し、西太平洋での覇権を目指している。よって、第2列島線上に位置するパラオから以東、すなわち米軍のプレゼンスが薄いポリネシアやメラネシアなどで軍事的な影響力を高め、太平洋上でのプレゼンスを強化したい狙いがある。

 近年、南太平洋の島国への中国の経済支援は目に見張るものがあるが、スリランカやパキスタンで起こっていることを南太平洋でも実践したいのかもしれない。いずれにせよ、南太平洋をめぐる中国やフランス、オーストラリア、さらには米国や日本を交えた競争は今後も続くことだろう。

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Text by 和田大樹