中国軍、「コピーのコピー」で急速に近代化 陸軍重視の脱却ともない

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◆組織改編や新兵器運用訓練も進行中
 PLAの近代化の動きは、1991年の湾岸戦争で、イラク軍が機械化された巨大戦力を持ちながらアメリカの最新鋭兵器に脆くも完敗したのを契機に始まった。中国経済の成長とともに軍事予算も急増。2000年から2016年にかけては、経済成長率を上回る平均10%ペースで伸びた(米防衛誌ナショナル・インタレスト)。

 2017年からは防衛支出の伸び率は5〜7%程度に落ち、兵員を30万人削減し、200万人体制となった。これでもまだ兵員数では世界最大の軍隊ではあるが、現在は「量から質」へと方針を変えてきている。同年から、組織改編に着手し、陸軍中心の編成から、陸・海・空軍を対等に運用する形に改めた。さらに、新たにロケット軍と戦略支援部隊を創設。ロケット軍は、米本土に届く長距離弾道弾・核を含む1000発以上のミサイルを擁するミサイル部隊で、戦略支援軍は人工衛星の打ち上げ・運用と敵の衛星の破壊任務に加え、敵防衛システムへのハッキング攻撃を行う。軍全体の指揮系統も再整備され、5地区の軍管区方式となった。これにより、現場の判断でより柔軟に対応できるようになったとナショナル・インタレスト誌は評価する。

 最新鋭兵器の配備が進む一方で、PLA全体の兵器の約40%は、59式戦車、J-7戦闘機などの1950年代の骨董品級だとされる。それらに慣れた兵たちが、99式戦車などをまだ使いこなせていない現実もあるようだ。昨年夏に内モンゴル自治区の演習場で行われた大規模演習では、最新鋭99A式戦車を擁する部隊が敗れるという波乱があった。デジタル化・相互リンクされた99式は遠くから敵を叩くことが可能だが、旧来の価値観で戦車部隊を前線にむやみに突進させたのが敗因だとされる。中国共産党系英字紙グローバルタイムズは、こうした反省のもと、PLA全体で今、新兵器を運用する兵員の訓練・戦術の練り直しが進んでいると報じている。

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Text by 内村 浩介