空母向け含むF35を105機購入へ その裏側に苦渋の決断

出典:航空自衛隊ホームページ

◆F-35Aの制空戦闘機としての性能には疑問符
 通常型のF-35Aは、旧式化が著しいF-4EJ/RF-4ファントムIIと、現在の主力戦闘機F-15J/DJイーグルと置き換えられる。F-4はベトナム戦争で活躍したもはや骨董品に近い機種だ。F-15も1970年代の基本設計から改修に改修を重ね、もはや近代化の限界に達している。航空自衛隊は201機のF-15を保有しているが、約半数がこれ以上の改修は不能とされ、後継機の導入が急がれていた。

 現在、航空自衛隊の戦闘機が担う主な任務は、中国機・ロシア機の領空侵犯に対するスクランブル発進だ。有事となれば、専守防衛を旨とするなかで制空権の確保が主任務となる。外交誌『ディプロマット』は、F-35Aは果たしてその任務に適しているかと、検討を加えている。筆者のジャーナリスト、フランツ-ステファン・ゲイディ氏は懐疑的だ。

 同氏は、F-35Aをスクランブル任務に使った場合、1時間当たりのフライトコストが現在その任務に就くF-15J/DJとF-2を大きく上回ると指摘。また、自衛隊OBからは、最新鋭機であるF-35Aの機密情報が中国・ロシアに収集され、両国の軍事技術アップに利用されるリスクを懸念している。

 多目的戦闘機として開発されたF-35Aの制空戦闘機としての性能は、専用設計の米空軍の現用機F-22などと比べれば劣るのは明白だ。制空権の確保には、自国の領空に侵入してくる敵国の航空機に対する空対空戦闘能力が必要とされるが、F-35Aは空対空ミサイルの搭載数やステルス性能、運動性能などでF-22を下回っている。ゲイディ氏は、F-35Aは「将来の中国・ロシアの制空戦闘機にも空対空戦闘能力で劣る」と断言する。実際、日本の防衛関係者も2030年代に次世代戦闘機を導入するまでの「繋ぎ」と捉えているようだ。日本は当初F-22の導入を検討したが、アメリカが機密保持のため同機を輸出禁止としたため、断念した経緯も忘れてはならない。

                                                                                                                 

◆トランプ氏の圧力も背景に
 F-35の大量購入の裏には、安倍政権の政治的な思惑も見え隠れする。トランプ大統領は、アジア太平洋地域からの米軍の順次撤退を示唆し、日本をはじめとする同盟国に自衛力の強化とそのための米国製兵器の購入の圧力を強めている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、中国の脅威とともに、対日貿易赤字解消の切り札にしたいトランプ大統領の「圧力」を、日本のF-35大量購入の動機に挙げている。

 ペンタゴン(米国防総省)は、F-35を「世界で最も先進的かつ、お値打ち価格で攻撃力・防御力に優れた戦闘機」だと喧伝している。各国外遊時に米国製兵器の売り込みに余念がないトランプ大統領も、F-35は特にお気に入りだ。日本などへのF-35売却を自らの成功体験に数えており、購入を決めた各国首脳を称賛することも忘れない。日本とすれば、アメリカの防衛力を繋ぎ止めるためにも、トランプ政権の機嫌を取っておきたいという思惑もあるだろう。

 海洋進出の足がかりとして日本の南西諸島海域を支配下に起きたい中国は、特にF-35Bの導入と連動した日本の空母保有計画には、敏感に反応している。ただ、「いずも」型改修空母の艦載機としてのF-35Bの力を過大評価してはならないという米識者の意見もある。中国空母の24機程度に対し、「いずも」は6〜8機のF-35Bしか搭載できないと見られるのに加え、同機に対地戦闘能力を与えると、憲法上の制約がある「攻撃型空母」になってしまため、用途が限られるからだ。実際、日本の防衛関係者も、むしろ離島の小規模空港などでの運用に重点を置いているようだ。

 日本のF-35大量購入は、中国の脅威、アメリカの思惑、憲法上の制約に挟まれた「苦渋の決断」という見方もできるかもしれない。

Text by 内村 浩介

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