「真の欧州軍」を切望するマクロン大統領 危機感の背景とは?

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 フランスのマクロン大統領は、フランスのラジオ局のインタビューで、欧州軍の必要性を訴えた。NATOとは別に安全保障上の脅威に対応する軍事力が必要だという考えで、背景には、アメリカ第一を掲げるトランプ大統領の防衛政策への不信や、欧州に広がるナショナリズムへの危機感があるようだ。

◆アメリカは頼れない 欧州は自力で防衛を
 マクロン大統領は、「中国、ロシア、そしてアメリカに対してさえ、我々は自衛する必要がある」と述べ、「真の欧州軍を持つ決意をしなければ、ヨーロッパの市民は守れない」「我々には、アメリカに頼ることなくより独立したやり方で、単独でより良い防衛をする欧州が必要だ」と語った。

 トランプ大統領がアメリカ第一主義を掲げ、NATOを批判した際には、欧州は独自の道を行くべきだとし、欧州軍の議論もあったという。しかし、ワシントン・タイムズ紙が指摘するように、その後NATO加盟国がワシントンの意向を受け入れ、防衛費をGDPの2%にするという目標達成に努力したこともあり、アメリカと欧州の緊張は緩和されていた。

 ドイツのメルケル首相とEU側は、NATOとの重複やEU懐疑派からの反発を懸念し、最近議論をトーンダウンさせており、EUの外交担当チーフも、「欧州の防衛協力は、EU軍創設に関するものではない」と述べていた。それだけに今回のマクロン大統領の発言は、これまでの防衛統合におけるEUの言い回しから外れたことを示すと『EUオブザーバー』は述べている。

Text by 山川 真智子