「真の欧州軍」を切望するマクロン大統領 危機感の背景とは?

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◆戦後秩序崩壊が引き金? トランプ氏とナショナリズム
 ワシントン・タイムズ紙は、今回のマクロン大統領の発言が、トランプ大統領への不信感から来るものだと見ている。これまでにもイラン核合意やパリ協定からの離脱などを含め、トランプ大統領の方針には批判的だった。しかし、最近トランプ大統領が中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄すると表明したことが、大きく影響したようだ。マクロン大統領は、欧州を襲った1980年代のミサイル危機の後に作られた主要軍縮条約を破棄することで犠牲になるのは、欧州とその安全保障だと述べ危機感を露わにしている。

 もう一つの理由として上げられるのは、欧州におけるナショナリズムの台頭だ。マクロン大統領は、過去70年の欧州における「平和と繁栄」は、黄金期だったと述べる。しかし、外側からの脅威と同様、ナショナリズムの台頭により、状況は不安定になっており、欧州に亀裂が入っていると主張している(EUオブザーバー)。今の状況と第一次、第二次世界大戦との類似性に衝撃を受けると述べており(BBC)、戦争の危機を回避するためにも、欧州軍の必要性を訴えているようだ。

◆実現の可能性は? ブレグジットも影響か
 BBCの防衛特派員、ジョナサン・マーカス氏は、EU軍の実現に疑問符をつける。同氏は、欧州のどの国も、アメリカの力を補うのに十分なほど、防衛に費やす政治的意志や経済力を持たないと見ている。さらに、危険な状況にある場所に派兵するというのは、究極的には各国政府の判断となると指摘しており、NATOでさえも、各国の部隊が訓練と活動をともにしているだけだとしている。アメリカとの関係は問題が多いかもしれないが、ロシアや中国への対応において、今後これまで以上に大切になることもあり得るのではないかと述べている。

 一方、欧州委員会のユンカー委員長は、以前から欧州軍の創設を支持している。長らくEU内での軍事協力に反対してきたイギリスがEUを離脱することで議論が再燃する可能性もある(ロイター)。

Text by 山川 真智子