中国が圧力、台湾と断交する国相次ぐ アメリカが歯止めに動くも冷めた中南米

Taiwan Presidential Office / flickr

◆台湾と断交なら罰則? アメリカが助け舟
 ディプロマット誌によれば、ホワイトハウスは8月末に発表した声明のなかで、台中関係を不安定にし、西半球で政治的介入をする中国に引き続き反対するとしている。同誌は、3ヶ国からの大使の召還は、これらの国だけでなく中国と世界の国々に向けられたものだと指摘している。事実、超党派の上院議員たちのグループが、中国に寝返った台湾の外交的同盟国を罰するための法案を提出している。台湾に不利な行動をする国に対し、アメリカとの関係の格下げ、援助の一時停止や見直しを行うことが盛り込まれており、台湾の国際的立場を守るものだということだ。

 アメリカはまた、中国の「一帯一路」構想などは、大きな経済依存を助長する負債の罠で、中国政府は借金の形に港や土地を取り上げることも躊躇しないと、前述の3ヶ国を含むラテンアメリカ諸国に警告している(トリビューン・ニュース・サービス、以下TNS)。

 こうした最近のアメリカの動きから判断すると、政府と議会の間で、台湾のために中国に対し積極的に立ち向かうという方針が合意に達したようだ、とディプロマット誌は述べている。 

◆ラテンアメリカ諸国は冷めた目 民主主義よりお金?
 しかし、ラテンアメリカのリーダーたちの反応はいまひとつだ。中国はアメリカが出さないインフラ整備のための資金を、喜んで提供してくれるからだという。トランプ政権は自国優先で、TPPのような多国間貿易協定から脱退し、すっかり地域への関与から手を引いてしまった。それなのにいまさら、アメリカを取るか中国を取るかと言われても困ると言うわけだ。メキシコの元中国大使、Jorge Guajardo氏は、決してアメリカとの関係が終わったわけではなく、トランプ政権以前にはなかった中国という競合相手が出てきただけだとしている(TNS)。

 蔡総統は、8月にアメリカを訪問し、「台湾を守ることは自由と民主主義の価値を守ること」と訴え、アメリカと世界に向けて台湾のために立ち上がるよう求めた。しかしTNSによれば、中国はペルー、コスタリカ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンなど、これまでアメリカとのつながりが深かった国々を相手に積極的な援助外交を続けている。台湾問題では、中国の経済力を前にして国際社会の賛同を得ることは、今後増々難しくなりそうだ。

Text by 山川 真智子