日本版海兵隊「水陸機動団」発足 海外メディアが指摘する課題とは?

出典:陸上自衛隊ホームページ

◆オスプレイは1000km以上離れた基地に
 新生陸自の象徴となった水陸機動団だが、早くも装備面でつまずきも見せている。離島への迅速な兵員輸送の要となるのは、米海兵隊も採用しているAAV-7水陸両用強襲輸送車とV-22オスプレイ輸送機だが、いずれも予定通りの配備が進んでいない。

 AAV-7については、予定していた52両のうち16両が配備されたに留まる。発注先の米メーカーの下請け工場の火災と部品供給の不足により、生産が大幅に遅れているためだという。オスプレイは、水陸機動団の駐屯地に近い佐賀空港の隣接地への配備が予定されていたが、地元の反対により当面は1000km以上離れた千葉県の木更津駐屯地に配備されることになった。米軍のオスプレイへの反対運動と佐賀県で陸自ヘリが民家に墜落した事故の影響で、地元自治体や地権者が難色を示し、基地の用地買収が間に合わなかったためだ。

 オスプレイは今年11月から17機が順次配備される予定だが、遠く離れた木更津に置いていては宝の持ち腐れになりかねない。ディプロマット誌は、装備品が効果的に揃わない現状を「大きな後退」と表現する。また、米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院の日本専門家、ウィリアム・ブルックス氏は、中国の水陸両用兵力と比べてあまりにも規模が小さいと指摘。彼我のバランスを取るために、「日本は引き続き米軍に強く依存しなければならない」としている(アジアタイムズ)。

                                                                                                                 

◆国内外の反発は比較的少ないか
 反政府勢力や反戦活動家は、当然水陸機動団の発足を快く思っていないだろう。上陸作戦を行うことができる部隊を持つことが専守防衛の戦後日本のポリシーから逸脱するという批判や、中国との軍拡競争によってやがて戦争をせざるを得ない状況に追い込まれるという懸念が、既に日本の批判的な勢力から出ていると、ディプロマット誌は指摘する。シンガポール・南洋理工大学の海洋防衛専門家、スウェー・リーン・コリン・コー氏は、中国のみならず、歴史認識問題とライバル意識から、韓国も批判を強めるだろうと見ている(アジアタイムズ)。

 ただ、これらの国内外の反発は、比較的小さいものに留まるというのが、コー氏ら海外識者の見解だ。同氏は、日本の大衆は、中国・北朝鮮の脅威を十分に認識しており、既に強い危機感が日本社会に浸透していると指摘。「日本の野党や活動家団体がこの問題を取り上げることは予想される。しかし、それが大衆の意見を動かすまでには至らないと思う」と言う。戦後の日本社会に巣食っていた平和ボケは既に過去のものになったという見方だ。

 ジョンズ・ホプキンズ大学のブルックス氏も、水陸機動団の発足は、憲法改正論議がされるようになった日本の世論の変化とは無関係ではないと見る。ただ、水陸機動団発足自体が改憲論議に発展することはないとしている。また、水陸機動団単独ではそれほど中国の脅威にはならないことは中国もよく理解しており、当面は強い反発もないのではないかと、アジアタイムズに語っている。一方、ロシアについては、日本が島嶼奪還能力を得たことをさらに北方領土の防衛基盤強化を正当化する口実にするのではないかとコー氏は指摘する。

 ともあれ、水陸機動団の力が実際に発揮される機会が訪れる可能性は「非常に低い」というのが各識者の一致した見解のようだ。水陸機動団の存在自体が抑止力として機能するのが最も理想的な防衛の形だが、課題は多く残されている。

Text by 内村 浩介

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