日本版海兵隊「水陸機動団」発足 海外メディアが指摘する課題とは?

出典:陸上自衛隊ホームページ

 陸上自衛隊の「水陸機動団」がこのほど発足した。離島の防衛・奪還を主任務とする2個連隊・2100人規模の日本版の海兵隊だ。中国の海洋進出を念頭に置いた日本の新たな防衛のスタンスを象徴する存在だとも言え、海外メディアも「陸上自衛隊発足以来、最大の構造改革」(外交誌・ディプロマット)などと注目している。

◆陸自再編成の要
 水陸機動団は、第1水陸機動連隊を主力とする2個連隊で、3月27日に発足した。長崎県佐世保市に拠点を置き、主に沖縄・東シナ海方面の離島防衛・奪還作戦に従事する。最終的には3個連隊・3000人規模とする計画だ。陸上自衛隊の中から抽出されたエリート部隊的な位置づけで、その点では陸海軍から独立した軍組織である米海兵隊とは異なる。

 米防衛誌ディフェンス・ニュースは、水陸機動団について、「九州から台湾にかけての日本南部の島々が占領された際に、それを奪還する任務が与えられている」と説明。アジアタイムズ紙は、イギリス海兵隊のコマンド旅団に近い組織だが、米海兵隊と同じAAV-7水陸両用強襲輸送車、V-22オスプレイを装備し、発足に向けてアメリカで海兵隊と合同訓練を重ねてきたことから、装備と訓練はアメリカ式だと位置づけている。こうした性格から、海外メディアの多くは“日本版の海兵隊”という表現を使っている。

 全国の陸上自衛隊部隊を一括して指揮する「陸上総隊」も、今月4日に発足。これまでは地方ごとに5つある方面隊に分けて指揮がとられていたが、空自、海自、米軍と連携を強化する目的で指揮系統が一元化された。水陸機動団は、この陸上総隊の直轄下に置かれている。また、機動力と即応力の強化を目指し、15の陸上自衛隊師団・旅団のうち、8個師団・旅団の再編も行われる(Defense News)。ディプロマット誌は、この動きを「日本の陸上自衛隊は1954年の創設以来、最も大きな構造改革を行った」と報じている。陸上自衛隊はようやく、冷戦時代の編成から、現代の安全保障情勢に対応した形に生まれ変わろうとしているのだ。

Text by 内村 浩介