ロシアの報復、欧米産の食品禁輸から3年 ロシアでは何が起こったのか?

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 ロシアは2014年3月、クリミア半島を併合した。その後、ロシアが東ウクライナで親ロシア派義勇兵をサポートしたことなどから、西側諸国はロシアに経済制裁を発動したが、プーチン大統領は報復として、EU、アメリカなどからの肉類、魚介類、乳製品、果物、野菜の輸入を禁止した。3年後の今も続く禁輸措置は、ロシアにどういった変化を与えたのだろうか。

◆愛国心に訴えたプーチン大統領。国民は禁輸を支持
 USニュース&ワールド・レポートに寄稿したモスクワ在住のジャーナリスト、ダリア・リトヴィノワ氏によれば、ロシア政府は、食品禁輸措置を決めた当時、この決定が西側を罰すると同時に、輸入品との競争がないことで国産品の需要が高まり、国内の農業セクターを成長させる、と主張していた。

 ブルームバーグ・ビューのコラムニスト、レオニード・バーシドスキー氏によれば、ロシア国内の調査では国民の3分の2が政府の禁輸措置を支持し、損害を受けるのは西側よりもロシアのほうだと答えたのはわずか12%だった。海外に出た際にチーズなどの食料品を買い込むロシア人が増えたのは事実だが、不法に輸入された食品を押しつぶすトラクターの映像が流れる国営テレビのキャンペーンCMをほとんどの国民は気に入っていた、と同氏は解説している。

◆禁輸を利用し、ロシアの食料生産が大幅アップ
 ロシアの独立非営利組織「TV-Novosti」が運営するRussia Beyond the Headlines (RBTH)によれば、禁輸開始後、予想通り国内市場では消費者の選択は狭まった。欧州からの果物や野菜は、トルコ、モロッコ、中東からの輸入品に変わり、欧州産の高品質なチーズは、国産、ベラルーシ産に置き換わった。

 上述のリトヴィノワ氏によれば、禁輸が始まったころは原油価格が記録的な安値となり、ルーブルは急落、西側諸国との関係も悪化し、ニュースでも「孤立」という言葉が頻繁に使われた。この暗い流れをポジティブに転換するため、ロシア政府は、輸入品中毒から抜け出し自給を目指そう、という呼びかけを始めた。

 政府は禁輸措置を国内生産者のための保護主義政策として利用し、中小の農業ビジネスに対し、低利の融資を行なった。また、禁輸と政府の補助金制度のおかげで、著名なビジネスマン、農業法人、政治家までが温室栽培事業に参入し、トマト、キュウリの生産は、2017年7月の時点で、1年前に比べ19.8%増えたという(RBTH)。

 ロシア国家統計局の調べでは、2014年と比較した2016年の生産は、牛肉17.5%、豚肉30.6%、鶏肉11.9%、冷凍野菜31.6%、牛乳5.8%、チーズ20.2%の増加となり、禁輸措置が生産増のインセンティブとなった。農業省によれば、この3年間で食品輸入はほぼ半減し、国内農業生産全体では、11%の増加となっている。同省の報道官は「ひさびさにロシア産食品が小売店の棚を独占し始めた」と述べ、肯定的に捉えているという(USニュース&ワールド・レポート)。

◆「輸入代替」成功も、庶民直撃の副作用が
 食料生産を増やし、「輸入代替」を成功させたロシアだが、負の側面のほうが大きいという指摘もある。安価な輸入品が減って価格が上昇したところに、インフレの影響も受け、消費が落ち込み販売も減少しているのだ。経済開発省によれば、食品の平均価格は3年前に比べ32%増となっている(RBTH)。

 リトヴィノワ氏は、輸入が減って価格が上がった魚を避け、安価な鶏肉を選ぶなど、禁輸が消費者行動を変えてしまった、と説明する。また、欧米の輸入食材を使っていたレストランなどは、品質の劣る国産品や禁輸対象外の国々からの輸入品を使わざるをえず、頭を痛めているとも述べている。

 さらに問題なのは、庶民を支えていたポーランド産のリンゴ、米国産の鶏肉といった最も安価な商品が小売店から消えてしまったことだ、とロシアの大学、RANEPAの経済学教授、ヴァシリー・ウズン氏は指摘。「食品は制裁戦争においては好ましくない武器だ。最初に打撃を受けるのは、他でもない自国民なのだから」と述べている(USニュース&ワールド・レポート)。

Text by 山川真智子

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