ロシアの報復、欧米産の食品禁輸から3年 ロシアでは何が起こったのか?

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 ロシア国家統計局の調べでは、2014年と比較した2016年の生産は、牛肉17.5%、豚肉30.6%、鶏肉11.9%、冷凍野菜31.6%、牛乳5.8%、チーズ20.2%の増加となり、禁輸措置が生産増のインセンティブとなった。農業省によれば、この3年間で食品輸入はほぼ半減し、国内農業生産全体では、11%の増加となっている。同省の報道官は「ひさびさにロシア産食品が小売店の棚を独占し始めた」と述べ、肯定的に捉えているという(USニュース&ワールド・レポート)。

◆「輸入代替」成功も、庶民直撃の副作用が
 食料生産を増やし、「輸入代替」を成功させたロシアだが、負の側面のほうが大きいという指摘もある。安価な輸入品が減って価格が上昇したところに、インフレの影響も受け、消費が落ち込み販売も減少しているのだ。経済開発省によれば、食品の平均価格は3年前に比べ32%増となっている(RBTH)。

 リトヴィノワ氏は、輸入が減って価格が上がった魚を避け、安価な鶏肉を選ぶなど、禁輸が消費者行動を変えてしまった、と説明する。また、欧米の輸入食材を使っていたレストランなどは、品質の劣る国産品や禁輸対象外の国々からの輸入品を使わざるをえず、頭を痛めているとも述べている。

 さらに問題なのは、庶民を支えていたポーランド産のリンゴ、米国産の鶏肉といった最も安価な商品が小売店から消えてしまったことだ、とロシアの大学、RANEPAの経済学教授、ヴァシリー・ウズン氏は指摘。「食品は制裁戦争においては好ましくない武器だ。最初に打撃を受けるのは、他でもない自国民なのだから」と述べている(USニュース&ワールド・レポート)。

Text by 山川 真智子