スタートから混乱のインドネシア高速鉄道計画、中国にとって試練…“まだ前兆に過ぎない”

◆そもそも高速鉄道は必要か?
 こうした懸念を裏付けるように、国会議員からも具体的な批判が飛び出している。地元紙、ジャカルタ・ポストによれば、ファーリ副議長が2日、記者団に対し、「巨額を投じる高速鉄道計画が、社会と経済に負のインパクトを与えかねない」と、懸念を示した。同氏は、「この計画には悪影響が多すぎる」と述べ、ジョコ大統領のインフラ推進政策にも合わないと指摘した。

 路線は人口密集地を通るため、ファーリ氏は用地買収などによって周辺住民に多大な影響を与えることを心配しているようだ。そもそも、高速鉄道の必要性について、疑問符をつける意見も見られる。計画では、現在3時間以上かかるジャカルタ―バンドン間が40分以下に短縮されるとされているが、野党議員の一人は、先週、記者団に「あのような短い距離に、高速鉄道が緊急に必要だろうか?」と発言している(ブルームバーグ)。反対派・懐疑派の間では、国民のニーズを無視した人気取りのための巨大プロジェクトだという見方が強いようだ。

 ブルームバーグは、ジョコ大統領の狙いは、インフラ投資拡大による経済再生だと記す。しかし、識者の間でも、それを急ぐあまり、とんだ勇み足になりそうだという見方が広がっている。新興国で活動するシンクタンク、「交通・開発政策研究所(ITDP)」のインドネシア担当ディレクター、ヨガ・アディウィナルト氏は、「ジョコ政権は、認可も得ずに強引に計画の進行を急いでいる。そして、大統領は、計画が失敗した時には責任を取らなければならないという圧力にさらされている」と、コメント。計画の実現性には依然、強い疑問符がついたままだ。

                                                                                                                 
Text by 内村 浩介