スタートから混乱のインドネシア高速鉄道計画、中国にとって試練…“まだ前兆に過ぎない”

「中国主導の高速鉄道計画は欠陥だらけ」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙=WSJ)、「中国製の高速鉄道、前途多難なスタート」(ブルームバーグ)、「中国の55億ドルの高速鉄道計画が停滞」(フィナンシャル・タイムズ紙=FT)――。日本との受注競争を制した中国主導のインドネシア高速鉄道計画が、スタートからつまずいている。先月21日にジョコ大統領も出席した華やかな起工式が行われたが、工事は未だ手付かず。世論の批判や問題点を、主要欧米各紙も大々的に報じる事態となっている。

◆安全・環境基準、用地買収など問題山積
 完成すれば東南アジア初となるインドネシアの高速鉄道計画は、首都ジャカルタと第3の都市バンドン間の140kmを4駅で結ぶ。総工費は約55億ドル(約6400億円)で、2019年の開業を目指す。海外投資の積極誘致を主要政策に掲げるジョコ大統領肝いりの一大プロジェクトだ。日本との激しい受注競争の末、昨年10月に中国案が正式に採用された。

                                                                                                                 

「ルートも駅の位置も日本案と全部同じで、違うのは金額の見積もりだけ」という当時のインドネシア運輸省幹部の発言に象徴されるように、最終的には「安さ」を取ったという見方が強い。国内世論では、日本案を採用すべきだったという声も目立っていたが、起工式を終えた今になっても、「安物買いの銭失い」になりかねないという懸念が強まっているようだ。

 WSJは、計画にはインドネシアの安全基準が全く反映されておらず、同国運輸省が認可をためらっていると報じている。同省のヘルマント鉄道総局長は、プロジェクトを進める中国・インドネシアの合弁企業側から具体的な計画書類が提出されているのは、140kmの全路線のうち、わずか5km分だけだとメディアに明かしている。FTによれば、「建設を請け負う中国とインドネシアのコンソーシアム(合弁会社)が必要な書類を提出していないため、同省はまだ建設許可や事業権契約に署名していない」という。環境評価の認可の手続きは進んでいるようだが、これにも時間がかかっている。また、線路敷設のために膨大な用地買収が必要で、人口密集地を通るだけに、短期間での実現は不可能だとする政府関係者らの発言も報じられている。

Text by 内村 浩介