スタートから混乱のインドネシア高速鉄道計画、中国にとって試練…“まだ前兆に過ぎない”

◆「中国企業の能力が試される」
 FTは、インドネシア政府側の「官僚主義」も、認可が遅れている原因だと指摘している。同紙は、「許可書の問題は外国人投資家が繰り返し口にする不満の一つだ」とし、世界銀行によるビジネス環境のランキングで、「インドネシアは官僚主義で知られる中国の84位より低い109位」というデータを紹介している。

「中国企業が複雑な民主主義の下で事業を行う能力が試されるとみられている」とFTは指摘する。国家肝いりのプロジェクトに簡単に認可が下りる一党独裁の共産主義国家とは違い、特にインドネシアの政治は極めて複雑だと同紙は記す。インドネシアでは、過去にも「土地の買収、環境問題、政争などのために、多くの計画が何年も中断したり、撤回されたりしている」といい、「今回の問題は、中国が直面するであろう数々の問題を味見した程度にすぎない」というアナリストの見解を紹介している。

 ジャカルタ在住の政治アナリスト、ポール・ローランド氏は、「この計画を2年ほどで終えられると思うのは、もともときわめて希望的な観測だった」とFTに述べている。WSJも、「ジョコ大統領の巨大事業を実行する力の限界」が浮き彫りになっていると、計画の実現に疑問符をつける。「中国国内の3倍」「イランの同様の計画よりも高い」と、工費が“ぼったくり”だという批判も国内メディアから出ている。WSJやFTは、こうした状況を俯瞰して、大統領肝いりのプロジェクトにより、逆に政権の信頼が揺らぎつつあると見ているようだ。

Text by 内村 浩介