テニスロボットがアスリートのトレーニングを変える? 米大が開発中

ジョージア工科大学

◆返球にカメラの情報を利用 ラリーも特訓中?
 モーターの力で、エスターはテニスコートの両サイドをカバーする敏捷性と推進力は備えていたが、主な課題は経路探索だったという。ロボットはボールの軌道を予測し、それを捉えるための最適な経路を決定する必要があるからだ。

 この課題を解決するため、開発チームはコート周辺にカメラを複数設置。カメラからの配信動画と内蔵コンピュータービジョンを使用することで、向かって来る球の位置を特定し、一貫性を持って返球できるまでに飛躍的進歩を遂げたという(インタレスティング・エンジニアリング)。チームは現在、エスターを一進一退のラリーに対応させるべく取り組んでいる。これが終われば次の段階として、戦略的なプレーを教えるという。

◆アスリートのトレーニングが激変? ほかへの応用に期待
 現在開発から2年が経過したエスターだが、ビデオを見る限りではプロ選手と戦えるレベルまでは全く到達しておらず、伸びしろはかなりあるようだ。

返球するエスターを撮影したビデオ。まだ打ち返すだけで精一杯といったところか

 エスターの革新的な側面は、アスリートのトレーニングを一変させる可能性にある。アスリートは特定の対戦相手のスタイルや戦術を模倣するロボットと対戦することでスキルを磨くことができる。

 さらに、より正確・慎重に行動できる自立型ロボットを開発することは、テニスの枠を超え、高齢者や身体障害者の介護作業のサポートなど、多くの日常生活を楽にすることにもつながると見られている(科学系研究紹介サイト『スタディ・ファインズ』)。

Text by 山川 真智子