NASA、なぜ原子力推進宇宙船の実証開発にロッキード・マーチンを選定したのか?

Lockheed Martin / flickr

 米航空宇宙局(NASA)が、原子力推進宇宙船の実証開発にロッキード・マーチンを選定した。なぜロッキード・マーチンを選定したのか。開発実証とはどのようなものか。安全性に問題はないのか。

◆NASA、火星有人ミッションに原子力推進宇宙船
 NASAは1月25日、国防高等研究計画局(DARPA)とともに、2027年までに火星有人ミッションに活用する原子力推進宇宙船を開発することを発表している。このプログラムは、DRACO(Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations)という。

 原子力推進宇宙船を開発している理由は、人類が目指す火星への飛行時間の短縮、宇宙での新たな領域での科学的な発見、安全保障そして宇宙ビジネスの活性化などが考えられる。NASAは50年以上前から、原子力推進宇宙船のエンジンテストを実施してきた。計画が途中で中止になってしまった背景はあるが、今回のプログラムは現在まで着実に進行している。

◆原子力推進宇宙船の実証開発にロッキード・マーチンを選定
 NASAは7月26日、原子力推進宇宙船の実証開発にロッキード・マーチンを選定したと発表した。ロッキード・マーチンと原子力部品メーカーBWXテクノロジーズの高い技術力が評価されたと考えられる。過去にもロッキード・マーチンは、NASAの惑星ミッション用の放射性同位体の発電機を製造するなどの実績もある。原子力推進宇宙船のエンジンである核熱推進(NTP)エンジンは、原子炉を使用して水素推進剤を非常に高い温度まで急速に加熱し、そのガスをエンジンノズルから噴出して強力な推力を生み出すことができる。このNTPシステムによって、これまの化学推進と同程度の高い推力を、2~5倍の高い効率で実現することが可能となる。(ロッキード・マーチン

 また、ロッキード・マーチンとBWXテクノロジーズは、このプログラムに資金を寄付しているという。ロッキード・マーチンは具体的な金額を明らかにしていないが、評価されたポイントの一つになっている可能性は考えられる。(スペースニュース

Text by 齊田興哉