トライ&エラーに躊躇不要、英国発の低価格コンピューター「ラスベリーパイ」

ラズベリーパイ 初期モデルを切断して四角くしたもので、後のラズペリーパイAモデルの設計発想に影響を与えた(minicube作)©︎Yuriko Ikeda(Japanese Raspberry Pi Users Group)

◆教育者vs ITエンジニア
 ラズベリーパイに限らず、手頃なシングルボードコンピューターは存在する。だが、ラズベリーパイが価格へのこだわりを持っている理由は、ラズベリーパイの創設者たちが「教育者」という立ち位置にあると言っていいだろう。

2013年に来日し、キーノートに登壇した共同創業者のエベン・アプトンさん
©︎Yuriko Ikeda(Japanese Raspberry Pi Users Group)

 製品の大量生産と販売が目的ではなく、コンピューターを利用したものづくりや、コンピューターを操る人材を輩出することにある。そのため、ラズベリーパイは「慈善団体」という立ち位置を取る(ただし、実際の販売に関する貿易や開発に関連する部分は、ラズベリーパイ(トレーディング)Ltdによって行われている)。

 2011年、ラズベリーパイのプロトタイプの存在を、イギリスの公共放送BBCのジャーナリストがブログで紹介するや否や、たった2日間で「60万件」の問い合わせが殺到し、最初に生産されることとなった25ドル(当時約2500円)の「Raspberry Pi 1」は、初日だけで10万個のオーダーが入ったほど、多くの人が望む製品として登場した。

◆高い能力を発揮する日本のラズパイユーザーたち
 2012年10月、太田さんら11人のラズベリーパイ愛好家の日本人たちが「ジャパニーズ・ラズベリーパイ・ユーザーズ・グループ」を立ち上げた。当時日本ではラズベリーパイはほぼ流通していなかったが、購入ルートを確保したり、財団と連絡を取りつつ日本語によるラズベリーパイの情報提供を開始したりしたという。

ジャパニーズ・ラズベリーパイ・ユーザーズ・グループ代表の太田昌文さんは、サン・マイクロシステムズのOpenSolarisプロジェクトのコア・コントリビューターだった。

 エベン・アプトンさん夫婦が無類の日本好きだということがきっかけで、自然な流れで交流を持つようになった太田さんたちは以後、財団発の公式プロジェクトや公式ガイドの日本語版翻訳にも関わるようになったという。

 「この仕事はボランティアだが、翻訳作業だけでなく、プロジェクトの動作検証も行っている。実際LEGOプロジェクトの翻訳時には、元のコードが間違っていることを突き止め、日本のチームメンバーが修正を施したほどだった」(太田さん)

Text by 寺町 幸枝