なぜNASAは火星有人探査に「原子力推進ロケット」を使おうとしているのか?

DARPA

 アメリカ航空宇宙局(NASA)は25日、米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)とともに、2027年までに火星有人ミッションに活用する原子力推進ロケットを開発することを発表。その理由とは。安全性に問題はないのか。

◆NASAが原子力推進ロケットの開発を発表
 24日のアメリカ航空宇宙学会(AIAA)の科学技術フォーラムで開かれた特別セッションにおいて、NASAはDARPAと提携して、高度な原子力推進ロケットを開発すると発表した。また、翌25日においても、NASAはホームページにおいて、同様の内容をプレスリリースにて発表している。

 これまでのロケットは、酸化剤の液体酸素、燃料の液体水素などの液体燃料や酸化剤である過塩素酸アンモニウム、燃料のアルミニウム、粘結剤のポリブタジエンなどを用いた固体燃料などを用い、化学反応により推進力を得ている。一方、原子力推進ロケットは、核分裂炉で発生させた非常に高温の熱を液体推進剤に伝え、膨張させ、ノズルから放出することで推進力を得る。

◆火星有人ミッションに活用
 NASAによると、原子力推進ロケットは火星への有人ミッションに活用されるという。2027年までのできるだけ早い時期に打ち上げる予定。

 原子力推進ロケットを使うことで、これまで化学推進であれば地球から火星まで9ヶ月かかっていたのを4ヶ月に短縮できる可能性があるという。これにより、宇宙飛行士が長期間の飛行により浴びてしまう宇宙放射線の被曝量を低減することができたり、また、宇宙船という狭い閉鎖空間内での心理的、身体的ストレスを減らすことができたりする。また、火星への食料、物資などの量も大幅に減らすことができるなどのメリットもある。(ロイター

Text by 齊田興哉