なぜNASAは火星有人探査に「原子力推進ロケット」を使おうとしているのか?

DARPA

◆原子力推進ロケットの安全性はどうなのか
 NASAもDARPAも原子力推進ロケットの計画の詳細までは公表していない。というよりも現時点では決まっていないと考えるのが自然だろう。だが、NASAのパム・メルロイ副長官は、原子力推進ロケットの打ち上げ後の安全性の対応について、原子力推進ロケットが打ち上げられた後に宇宙で分離・廃棄された部分は、地球の大気圏へと再突入する前に高度2000キロ、最低でも700キロを周回させ、燃料である核が許容できる放射線レベルまで減衰してから大気圏へと突入させると述べている(スペースニュース)。

 実は、50年以上前にNASAは原子力推進ロケットのエンジンのテストを行っていたが、途中で計画が中止となっている。だが今回は、途中で頓挫せず進行していく可能性があるのではないだろうか。その理由に、NASAとDARPAは2023年3月頃までにこの原子力推進エンジンを開発する会社を選定する予定であること、アメリカは宇宙を宇宙ビジネスの活性化に必要な領域、安全保障上の重要な領域、科学的な新たな発見をもたらしてくれる領域と位置づけていること、火星へのハブ拠点と位置づけている月について有人月面計画「アルテミス計画」が現在進行していること、また、2023 年度予算は1億1000万ドルになるなどと予想されていることなどが挙げられる。このように、原子力推進ロケットを活用する時代が現実味を帯びてきていると考えても不思議ではない。

Text by 齊田興哉