「ボアードエイプ」仕掛人暴露に見る仮名問題、Web3における社会的責任

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◆仮名の意義と責任問題
 NFTやWeb3が今後さらにメインストリーム化するにつれ、仮名の会社が多額の取引を行うということは、経済的・法的な実際問題となりつつあるとバズフィード記者ケイティ・ノトプロス(Katie Notopoulos)は指摘する。一方、仮名使用は、創業者が見た目や学歴、人種やジェンダーなどで差別される可能性をなくすといったようなメリットもある。

 今回のバズフィードによる暴露は、個人情報の公開によるハラスメントだとして、クリプトやNFTを支持するコミュニティから独善的な怒りの反発を受けた。同時に、記者に対して脅しをかけるような動きもあったようだ。

 ヴァイスのテクノロジー・セクションであるマザーボードの記者マクセル・ストラチャン(Maxwell Strachan)は、実名公表に対するこうした怒りの反発は、今後ますます顕在化するであろうWeb3をめぐる衝突を象徴するような出来事だと論ずる。クリプト、NFT、メタバースなどの動きを包括するような「Web3のムーブメント」は、誰もが参加でき、非中央集権化されたより平等な仕組みだというポジショニングに成功している。しかし、理論上の約束は非中央集権化された仕組みでも、実際はクリプトやNFTの関連企業の動きは中央集権化され、一部の組織や人物に権力と富が集中しているとの指摘もある。Web3も結局は、Web 2.0の文脈におけるビッグテックのような大企業がコントロールするような世界になるのだろうか。Web3の関連企業の社会的責任の問題は、引き続き議論が必要になりそうだ。

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Text by MAKI NAKATA