全世界で加入者数9000万人を獲得したNetflixのユニークな戦略とは

flickr/ Yvonne Esperanza, CC BY 2.0

著:Amanda Lotzミシガン大学 Fellow at the Peabody Media Center and Professor of Communication Studies and Screen Arts & Cultures)

 動画配信サービスのNetflix(ネットフリックス)はわずか10年で急成長を遂げた。10年前の加入者数はアメリカ国内に700万人だったが、それが今や世界各国に総計9300万人のユーザーを有するまでになった。

 Netflixはレンタルビデオ業からスタートし、今ではテレビと映画を取り扱うメディアに育っているが、すでに確立された業界への参入に成功し、成長するというのは並大抵のことではない。Netflixをはじめとするインターネット配信動画サービスによって、既存のテレビ業界は否応なしに大きな転換を迫られた。その経緯については、拙著「ポータル:インターネット配信型テレビに関する論文」で詳しく研究している。

 同様に、Netflixの戦略を理解しようと悪戦苦闘している人は数多い。他社もこぞって動画配信サービス市場に参入する中、Netflixはいかにして進化を続け、また加入者基盤を構築してきたのだろうか?

赤く色づけされているのが、Netflix加入者がいる地域 Wikipedia Commons

赤く色づけされているのが、Netflix加入者がいる地域 Wikipedia Commons

◆ニッチ向けテレビの種
 設立当初の1990年代、NetflixはDVD(主に映画)の宅配サービスを展開していた。同サービスの利便性に既存の映画レンタル業界は激震し、結果的に衰退へと追い込まれていった

 一方、テレビには再興の時代が到来した。ケーブルテレビの放送局はニッチな視聴者層向けに「The Sopranos」や「The Shield」などストーリー展開が複雑な連続ドラマを提供するようになった。ケーブルテレビの場合、加入者と広告主の両者から収益を得られるため、視聴者がそれほど多くなくても成功することが可能なのだ。

 その後2000年代初めには圧縮技術が進歩し、また多くの家庭が高速インターネットサービスにアクセスできるようになったことから、大容量の動画ファイルをインターネット上で簡単にストリーミングできるようになった。

 こうした技術革新に後押しされたNetflixは2007年、それまでのDVD宅配サービスから発展する形で、全国的な動画ストリーミング事業を立ち上げることとなった。

 ほどなくして、シリーズ番組は同社のビジネス戦略に欠かせない存在となり、 2016年の夏にはストリーミング件数の70%を占めるようになった。

Text by The Conversation