全世界で加入者数9000万人を獲得したNetflixのユニークな戦略とは

flickr/ Yvonne Esperanza, CC BY 2.0

◆多様なモデル、多様な戦略
 長年にわたり、テレビ番組は放送波を介して配信されてきた。これは、全国一帯に及ぶ広大な範囲に無線信号を送る、画期的な技術だ。しかし、この放送技術で同じ地域に送信できるメッセージは1つに限られる。

 Netflixなどの動画ストリーミングサービス(いわゆる「ポータル」)は、インターネットを介し「オンデマンド」で番組を配信するため、視聴者は「放送されているもの」を見るのではなく、好きな時に好きな番組を見ることができる。つまり、従来の放送局は番組のスケジュールを立てるのが仕事だったが、ポータルの場合は番組のライブラリを充実させていくことが重要な任務となるのだ。

 このことから、各放送局は独自のビジネス戦略をたてることができ、多様な番組を制作することが可能となる。

 放送ネットワークとケーブルチャンネルは、視聴者を広告主に販売するという形で収入を得ている。 一方、Netflix(およびAmazon VideoやSeeSoなど多くのポータル)は、加入者による資金提供で成り立っている。視聴者は月額料金を支払い、コンテンツライブラリにアクセスする。確かに、アメリカの大手ケーブルテレビ会社Home Box Office(HBO)もまた、長年にわたって加入者の利用料に支えられている。これがケーブルテレビという企業形態でありながら、多くの番組に独自性が見られる要因だ(HBOは2015年にポータル「HBO Now」を設立し、加入者が利用料を支払うという収益モデルと、オンデマンドで番組ライブラリを提供する技術とのマッチングを強化した)。

 加入者に資金を負担してもらうタイプのサービスでは、視聴者が「月額料金を支払う価値がある」と納得するだけの番組を提供していかなければならない。広告主が資金源となるテレビでは、視聴率が番組成功の基準となるのに対し、こちらのタイプではすべての番組が大勢の視聴者を獲得する必要はない。必要なのは、加入者に利用料を支払い続けてもらえるだけの価値のあるサービスを提供していくことだ。

 多くのポータルは、付加価値を高めるため、特定の分野に特化した番組を配信している。たとえばWWEネットワークは、レスリングの試合やレスリング関連コンテンツの配信数ならどこにも負けないという。同様に、未就学児向けの番組を提供するNogginの強みは、広告なしの幼児番組を制作している点だ。

Text by The Conversation