海底菜園、CO2・プラごみ回収 海での環境負荷低減テクノロジー

©OceanReefGroup & Nemo’s Garden By OCEAN REEF

 気候変動対策は、私たちの生活のほぼすべての分野に及ぶ。地球表面の7割を占める海洋でも、テクノロジーを駆使したさまざまな対策が進められている。ユニークな取り組みで世界が関心を寄せている、欧米3企業の最新情報を紹介しよう。

◆海底に作られたエコ菜園「ネモの庭」

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 異常気象が農業に与える影響は大きい。国際紛争によって物流が滞り食料不足を引き起きしている。現在80億人を超えた世界人口は増え続け、深刻な食料不足も予想されている。そんな食料問題解決の一助になるかもしれないアイデアが、ダイビング用品メーカー、オーシャン・リーフによって実用化されようとしている。そのアイデアとは、海底での水耕栽培だ。

 イタリア北部で昨夏、ドーム9個を海底に固定した菜園「ネモの庭」がフル稼働を始めた。タイム、レモンバーム、バジルなどを主に栽培し、アロエ、ディル、オクラといった植物も少量ずつ育てている。8月には、食品の安全性と持続可能性が世界基準を満たしていることを証明する農業認証「グローバルGAP」を取得し、収穫したバジルとタイムを使ったチョコレートも販売した。

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 水耕栽培には、約2千リットルの空気に満ちたプラスチック製のドームを使う。海水から作られる淡水(温度や湿度が高いドーム内では、大量の海水が蒸発する)と空からドームに届く直射日光とでハーブや野菜を育てる。ドームにはWi-Fi、カメラ、照明、空気循環装置が設置されている。気温、酸素濃度、二酸化炭素(CO2)量、照度などはセンサーで厳密に監視。持続可能性を考慮し、システムに必要な電力は4枚のソーラーパネルから得る。

 このアイデアは10年以上前に、同社のセルジオ・ガンベリーニCEOの心に浮かんだ。実験を重ね、数年前からは世界有数のテクノロジー企業シーメンスとも協力し、栽培システムの向上を図っている。

 同社は、ネモの庭を世界のどこにでも設置できるよう研究を続けている。昨夏、米オハイオ州のダイビングスポット「ギルボア・クワリー」にも、ネモの庭が設置されることが発表された

Text by 岩澤 里美