野生生物個体群が69%減少、1970年以来 崩れゆくバイオダイバーシティ

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◆原因をつくるのはヒト
 その原因は、開発による生息地の消失、動物の捕獲、公害、地球温暖化、侵略的外来種の到来などで、いずれにもヒトが直接的あるいは間接的に関わっている。

 WWFのレポートは、このうち地球温暖化の影響が、近年色濃くなってきていることも指摘している。というのも、地球温暖化は脊椎動物の生息域を簡単に奪うことができるからだ。たとえば、一部の脊椎動物が生息するサンゴは、1.5度の温度上昇で70~90%、温度が2度上昇すれば99%以上死滅するとWWFは予測している。

◆地球温暖化とバイオダイバーシティの危機は表裏一体
 劇的な減少は、昆虫の世界でも観察されている。食物連鎖のなかで中心的な役割を担う昆虫は、それ以外にも植物の受粉を助けたり、有機物を分解して土壌を肥沃にしたりと、生態系への貢献度が高い生き物だ。

 地球上には550万種の昆虫がいると推定されているが、現在確認されているのはそのうち約100万種に過ぎない。そのため全体像ははっきりしていないが、「ミツバチ、チョウ、トンボ、カブトムシなどに限っても、大幅に減少していることに疑いの余地はない」と科学者は記す(ルクセンブルクの科学研究機関サイト『サイエンス・リュ』6/24)。実際、2017年に発表された報告によれば、ドイツ内63の自然保護区において、飛ぶことのできる昆虫の数は27年間で75%減少したという(同)。

 地球全体でいえば、昆虫の10~30%の種が減少あるいは絶滅の危機に瀕しており、個体数は毎年約1%減少していると推定されている。このままいけば、2045年までに4分の1以上が消滅してしまう計算だ。複数ある原因のなかでもとくに大きなものは都市化と農業、そして地球温暖化と、やはりヒトが関係するものだ。

 動物も昆虫も劇的に減少を続けるなか、国際連合は、世界人口が今秋80億人、2080年代には約104億人に達するという予測を示した。「……そしてヒトだけが残る」悪夢は、確実に近づいている。

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Text by 冠ゆき