二酸化炭素を削減するには?「親炭素術」の回収・貯留・利用

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◆「親炭素術」は現代の錬金術
 CO2削減に向けては、色々なアプローチがあるが、次に排出されるCO2を利用する試みを紹介する。排出されるCO2を回収・利用・貯留するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)の試みは経済産業省や資源エネルギー庁が中心になって進めており、その早期の実用化が望まれる。

「脱炭素」や「低炭素」が叫ばれ、CO2は悪玉になっているが、CO2の有効変換・利用を考える意味から、「新炭素」という言葉も生まれている。筆者は、CO2と親しくする意味から、「親炭素」と標榜したいところだ。「親水性」「親電子」と言われる「親」だ。

 化学的には、排出されるCO2を原料にして、種々の炭化水素(メタン、エタン、エチレンなど)、アルコール(メタノール、エタノールなど)、カルボン酸(ギ酸、酢酸、炭素数の多い脂肪酸など)、ポリカーボネート類のポリマーなどの有用化学物質の合成が可能だ。これは既存の化学、とくに「有機合成化学」という分野の力を駆使しなければならない。

 これは、「現代錬金術」と言える手法だが、「錬炭素術」「親炭素術」と言ってもいいだろう。火力発電所などから排出されるCO2を即、有用化学物質に変換できればCO2削減に寄与することは間違いない。研究レベルでは色々なことが可能だが、用途や需要、コストなどがネックとなり実用化に至っているケースは多くない。

 東芝が、太陽光発電による水電解から製造した水素と、火力発電所の排ガスからのCO2で、メタノールを製造する実証事業を2018年より開始している。また、三菱系各社は、前述の苫小牧にあるCO2回収設備からのCO2と、製油所から発生する副生水素と水電解により発生させた水素を原料として、メタノールを合成するプラント設置を想定した調査事業を2020年3月より始めている。

 一方、アイスランドのCRI(Carbon Recycling International)社は、世界初のCO2からのメタノール生産プラントを2012年から稼働している。同企業が運転しているプラントは、地熱発電由来の電力で水を電気分解した水素と、地熱発電の随伴ガスであるCO2から、メタノールを製造して「Vulcanol」(「volcano(火山)」と「alcohol(アルコール)」からの複合名詞)という商品名で売り出している。

 化学には二つの側面がある。化学の発展により便利で豊かな生活を享受するというプラスの面。一方、地球温暖化など環境問題が惹起されたのは化学のマイナスの面が原因だ。しかし、その地球を救うのも化学の力、上記のメタノールの製造は、化学のプラスの面となる一つの手法となるだろう。「化学は地球を救う」と言える。

◆まとめ:日本は脱炭素の主役になれる!
 以上、CO2削減の視点から、CO2そのものの回収・貯留そして利用について考えてきた。知的財産分析をしている企業アスタミューゼによると、我が国の2018年のCO2削減の国外特許申請件数は約1万5000件で、2位アメリカの1.7倍と数が多く、日本が脱炭素社会を牽引する主役になれると期待できる。

 上述のメタノール生産では水素が重要な働きをしている。水素は次世代のエネルギーとして注目を浴びており、「人工光合成」と密接に関係している。これについては次の稿を楽しみにしていただきたい。

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Text by 和田眞