「レジ袋有料化」の本当の狙い

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 7月1日から日本でもレジ袋の有料化が始まった。他国ではすでに有料化され、あるいは使用禁止になっている国もあるので、今回の措置は遅かったように思われる。この背景には、我が国の環境に関する意識の低さがあり、身の回りにはこれほどの化学製品や化学物質が溢れているのに、意外にも「化学のしくみ」を知らないで生活していることが多いことが原因ではないだろうか。そこで、化学を専攻した者として、本稿では、レジ袋有料化の意味するところを簡易な言葉で、化学的にお伝えしようと思う。このことにより、身の回りの生活と化学の距離が近くなってくれればと願う。

◆「燃料」であり「ごみ」、レジ袋はポリエチレン
 現在使われているレジ袋はポリエチレンという化学物質だ。「ポリ」は高分子・ポリマー(Polymer)のこと。原料のエチレンは気体で自然界にも存在し、果物が熟すときの植物ホルモンで、輸入したばかりの青いバナナを黄色くするときに使われる。このエチレン分子をいくつもつなげた(重合)ものがポリエチレンだ。

 エチレンは、自然界のものを集めているわけではなく、人工的・工業的に造られている。原油は種々の炭化水素(炭素と水素からできている化合物の総称)の混合物であり、これを沸点の違いによって分離することが可能で、ナフサ、灯油、軽油、重油などが得られる。ナフサは沸点の低い炭化水素の混合物で、これを精製するとガソリンになるが、ガソリンも混合物で単一の化合物ではない。ナフサをクラッキング(分解)するとエチレンが得られる。エチレンは現在このように大量に造られており、日本はエチレンの輸出国だ。このように、ポリエチレンは、炭素と水素からできている炭化水素で、燃料であるから、よく燃え、完全燃焼すれば二酸化炭素と水になる。そのため、地球温暖化の原因となるので、基本的には燃やしてはいけない。しかし、レジ袋は家庭の可燃物のごみ袋として使われ、燃やされてしまっている。

 一方、ポリエチレンは、自然界、たとえば土の中や水中の微生物などで分解せず、半永久的に安定なままに残留するので、ごみとなってしまう。海に流れ、紫外線や波の作用などで微粒子に変化、マイクロプラスチックとなってしまい、現在、大きな問題になっている。マイクロプラスチックが魚貝類に入り、食物連鎖によって人間の身体にも侵入していることは脅威だ。

 以上のように、ポリエチレンは「燃料」と「ゴミ」という二点において、大きな問題を抱えている。

Text by 和田眞