「レジ袋有料化」の本当の狙い

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◆レジ袋有料化がプラごみ削減につながらない現実
 レジ袋有料化の目的の一つは当然プラごみの削減だ。しかし、日本で排出されるプラごみは年間約900万トンで、そのうちレジ袋は2~3%。したがってレジ袋の有料化だけでは、プラごみ削減につながらないのは当たり前だ。環境省は、プラごみの削減に向け、2030年までの数値目標として使い捨てプラスチック排出量の25%削減を打ち出している。本当に、これを実現できるのか、今回のレジ袋有料化は、自然環境保全の立場から言えば、まだ道半ばで不十分と言わざるをえない。

◆大半が焼却されている使い捨てプラごみ
 レジ袋以外にも、むしろそれ以上に、たくさんの使い捨てプラ製品が身の回りに溢れている。ポリエチレンはその用途により、種々の機能を有するものが作られており、包装材(ラップフィルム、食品チューブ、食品容器)、農業用フィルム、電線被覆、牛乳パックの内張りフィルム、シャンプー・リンス容器、バケツ、ガソリンタンク、灯油かん、コンテナ、パイプなど、色々な製品として私たちの生活を豊かにしている。しかし、その量があまりにも多く、大きなごみ問題になっている。さらに、ポリエチレン以外にも多くのポリマーが開発され使用されている。これらの化学的説明については、長くなるので今回は割愛する。

 さて、日本は、一人当たりの使い捨てプラごみの発生量が米国に次いで2番目に多く、「プラごみ大国」だ。日本は、プラごみの分別・回収が進んでいるとは言え、再生樹脂などへのマテリアルリサイクル率はわずか25%。そのほかは、火力発電、RPF(廃プラスチック類を主原料とした高品位の固形燃料)、セメント燃料などの熱回収率が57%、焼却・埋め立てが18%と、結局75%は焼却されている。焼却すれば、上述のように二酸化炭素が発生する。問題はそればかりではなく、塩素原子を含んだプラスチック(ラップやパイプ、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン)が相変わらず製造され使用されており、これらを焼却することの是非だ。かつて大騒ぎしたダイオキシン類発生の懸念がある。

 したがって、私たちは、いわゆるプラスチック類の過剰な使用を抑制し、賢く利用していく必要がある。

◆レジ袋有料化の本当の狙い ライフスタイルの転換を
 上で述べた通り、レジ袋有料化は焼け石に水だ。しかし、遅れたとは言え、レジ袋有料化に踏み切ったのはそれなりの理由があるからだろう。経済産業省のホームページには、レジ袋有料化の目的について、「普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとする」と書かれている。レジ袋有料化とプラごみ削減は、あくまで別問題ということだろう。プラスチックを使い捨てる習慣そのものを変えなければならない。長いこと当たり前のように続いてきた「大量生産・大量消費・大量廃棄」の悪循環をどこかで断ち切る勇気が必要かもしれない。染みついた人間のライフスタイル、ものの考え方と言ってもいいが、これを変えることはなかなか難しい。しかし、現在のプラごみ問題を解決するには、小手先の対応では不可能であり、広く人間社会の転換、環境問題への意識向上が不可欠だ。地球温暖化と環境汚染問題をどう解決するのか、政治・行政・経済・法律・科学の力を総結集しなければならないが、もとより国民一人一人の意識改革が重要だ。今回のレジ袋有料化には、そのような難しい視点が秘められていると考えるべきではないだろうか。

 災害には、「天災」と「人災」があるが、もう一つ、文明の進歩による災害「文明災」を忘れてはならない。プラごみによる環境汚染は、化学の進歩による「文明災」、とりわけ「化学災」と呼んでもいいかもしれない。コロナパンデミックを経験している現在、人間のライフスタイルを変える「新しい生活様式」が求められている。

Text by 和田眞