進む世界的な女性の貧困 コロナで失業、家事労働の負担も原因に

Rafiq Maqbool / AP Photo

◆失業、そして家事労働という負担
 女性は多くの国において、ホスピタリティ産業や教育、飲食、小売など、パンデミックのような危機においてはとくに脆弱な職業に就いている可能性が高い。とくに開発途上国の女性たちは一般的に家事労働者や市場の売り子として働いており、突然の失業に対する保護や補償はほとんどない。世界の労働人口に占める女性の割合はわずか39%だが、今回のパンデミック関連の失業における54%が女性であったことをフォーリン・アフェアー誌(1/5)が伝えている。

 女性が家庭内の仕事の多くを担っていることも女性の貧困が進む一つの要因だ。多くの国で学校や保育施設が閉鎖に追い込まれ、女性たちは子供の世話の大部分を負担することになった。世界的コンサルティング会社のダルバーグは、パンデミックによってインドの女性が家事労働に費やす時間が30%増えたと推定した。

◆日本や北米、ヨーロッパでも
 開発途上国だけの問題ではない。日本でも、新型コロナウイルスの影響で最大74万人の女性の雇用が失われたが、これは男性の倍以上にのぼる。またNHKによると、昨年4月以降に職を失った人のうち、11月の時点で再就職している人の割合が男性75%だったのに対して女性は61%にとどまっており、子供の世話など家事労働の多くを女性が担っていることが伺える。

 アメリカ政府は、昨年12月に失業した14万人すべてが女性だったという衝撃的な数字を発表した(CNN、1/8)。カナダでは昨年2月から6月の間に失業した女性の3分の1が再就職先を探していない(CBC、2020/7/16)。政府による手厚い対策が取られたヨーロッパの主要国でさえ、女性労働者の賃金は男性労働者よりも急速に低下している。国際労働機関(ILO)が昨年12月に行った調査によると、ドイツにおける女性の賃金は8.6%下落しており、男性の下落幅の倍近くに達した。イギリスでは12.9%の下落で、こちらも男性の倍近くである(ブルームバーグ、12/30)。

 国連開発計画は、パンデミックの影響で女性が遅れをとってしまうのを防ぐため、職業差別や男女間の賃金格差の解消、安価な保育サービスの検討といったことから、社会的に弱い立場にある女性を対象とした経済的支援パッケージの導入、女性と少女を対象とした社会的保護政策の強化に至るまで、幅広い対策が推奨されるとしている。

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Text by 中原加晴