感染に怯えるベビーブーマー、就職できないZ世代……各世代を襲う新型コロナ

Matt Slocum / AP Photo

 新型コロナウイルス感染症の流行による社会的、経済的影響が世界に広がっている。感染者数は全世界で6375万人、死亡者数は147万人(いずれも12月2日現在)。失業率は各地で高水準を記録しており、スペインで8月に16.7%、アメリカで4月に14.7%(同国で世界恐慌以降最悪)、カナダで5月に13.7%(同国で過去最悪)だった。

 すべての世代の人々が、このパンデミックによる影響を受けていることは明らかだ。その上で、世代間で受ける影響にどのような差異があるのか、アメリカの現状を例に考えてみたい。

◆ウイルスに怯えるベビーブーマー、板挟みのジェネレーションX
 ベトナム戦争やキューバ危機、テロの脅威や政治改革など、さまざまな世界的危機を経験してきたアメリカのベビーブーマー世代(1946年〜64年生まれ)。コロナウイルスによって生じた世界的な混乱にも容易には動じないように思える。しかしコロナウイルスによって最も健康が脅かされているのがこの世代だ。高齢者の感染率は若者に比べて数倍高く、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告によると、アメリカでの感染死亡者10人中8人が65歳以上の人だった。

 健康面だけでなく、いまだ労働市場にいる人にとっては財政面での危機でもある。ピュー・リサーチ・センター(11/9)は、ベビーブーマー世代の退職の流れが加速していることを報じた。報告によると、2020年の第3四半期には約2860万人のベビーブーマーが退職により労働市場から去った。これは2019年の同四半期に退職した2540万人よりも320万人多く、近年の退職者増加数年平均約200万人を上回る数字だ。また、2020年2月以降ベビーブーマー世代の退職者数は約110万人増加したが、こちらも昨年2月〜9月までの増加数約25万人と比べるとその大きさは顕著である。

 ジェネレーションX世代(1965〜1980年生まれ)は、親世代と子供世代の間で板挟みの状態だ。高齢の親の健康や財政面を心配しながら、学校が閉鎖してしまった子供たちの教育や精神面についても不安を抱えている。それに加え、フォーブス(10/27)によると、ジェネレーションX世代のほぼ4分の1が今年に入って収入が50%以上減少した。彼らはこの状態で、生活費に加えて退職後の貯蓄も捻出する必要がある。現在のアメリカでは退職後に企業が提供する年金がない場合が多いためだ。ジェネレーションX世代はいま、ほかの世代が経験したことのないきわめて困難な状態を経験している。

Text by 中原加晴