驚きのペースで解けているグリーンランドの氷 想定される最悪の事態は?

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◆薄い世論の関心、すでに対策は不可能?
 この夏グリーンランドでは1日に125億トンの氷が消滅した日があり、その日、氷河から大量の水があふれ出す衝撃映像が拡散した。これを見た人は現在の温暖化など序の口だと気づかされたに違いないと、フォーブス誌の環境テクノロジー・ライター、スコット・スノーデン氏は話す。

 ブルームバーグ・オピニオンのコラムニスト、ステファン・L・カーター氏もこのことに触れるが、映像のすごさだけで、だれも事の重大さに気づいていないとする。イェール大学の経済学者、ウイリアム・ノードハウス氏によれば、気候変動を抑制する強力な規制は政治的に不可能なので、グリーンランドの氷は22世紀には消滅するということだ。結果として訪れるのは海面上昇で、22世紀にはアメリカ東海岸の海面を20センチ上昇させるほどの影響があるとしている。

 ジョージア大学のモート教授は、グリーンランドの10倍の氷がある南極が解けだすことも懸念する。米国科学アカデミーは、過去の予測に比べ海面上昇はさらに加速すると見ており、このまま対応が遅れればグリーンランドと南極の氷が解け出し、今世紀末には海面は2メートル以上上昇するとしている。そうなればロンドンやハンブルグなどの都市は水没し、世界で1億8700万人が住む場所を失うとしている。多くの科学者がこれまでの海面上昇の予測は控えめだったとしており、ドイツのポツダム気候影響研究所などは、5メートルもあり得るとしている(フォーブス誌)。

◆最善策は引っ越し 技術の進歩にも期待
 上述のカーター氏は、海面上昇は迫りくる現実だとし、海沿いに住む人は引っ越すべきだと述べる。すでに引っ越す余裕のある人々は内陸部へ移動し始めており、将来的に水没の危険が指摘されているマイアミなどでは、高台にある物件の価格のほうが、低地の物件より高い値上がり率を見せているということだ。

 同氏はテクノロジーによる温暖化の影響の緩和にも期待をかけ、温暖化ガスを除去する二酸化炭素貯留などの技術が有望だと述べる。技術者が新しいアイデアを出してもテクノロジーでは温暖化は防げないと主張する人が多いが、温暖化の脅威は迫っており、挑戦しないことが正当化されてはならないとしている。

Text by 山川 真智子