売れ残り商品はもう燃やさない サステイナブルな消費と生産とは?

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著:堀内 秀晃(株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパン)

 最近、新聞、雑誌等のメディアでSDGsという言葉を眼にすることが多くなった。これは「Sustainable Development Goals」の略で、「持続可能な開発目標」と訳されている。「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」といった17項目の大きな目標がある。

 その中の12番目に「つくる責任、つかう責任」という項目があり、「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」とある。今までの大量生産、大量消費という暮らしは資源やエネルギーの面で地球を蝕んでいくことになるので、これを見直そうというものである。まだ食べられる食品を廃棄してしまう食品ロスがその代表例であるが、消費者向けに販売することを目的に製造されたが、売れ残ったアパレルや雑貨といった商品在庫も廃棄されれば同じである。

                                                                                                                 

◆商品が廃棄されるワケ
 英国高級ブランドのバーバリーが、一昨年にブランド保護のために衣料品、アクセサリー、香水を2,860万ポンド(約40億円)相当を廃棄していたことが大きく報じられ、同社は世間に厳しく指弾され、廃棄をゼロにする旨を発表することで幕引きを図った。値引き販売等によるブランド毀損を回避するという名目で、大量の廃棄が行なわれることはバーバリーや一握りの高級ブランドに限ったことではなく、ブランド品を扱う企業、特に外資系ブランドではよく行なわれている。売れ残った在庫を廃棄・焼却するには費用がかかるが、こういった在庫の廃棄に関わる費用は予め企業の予算に組み込まれている。つまり、一定量の在庫の廃棄が発生することは、ブランド品を製造し、販売する企業にとってはビジネスモデル上の前提になっているのである。

 小売業者にとっては、消費者が求める商品が売り切れになってしまう、いわゆる「売り逃し」を避けたいという動機が強いので、どうしても少し多めに仕入れてしまうことはやむを得ない。また、過去のデータをどれだけ精緻に分析しても今年の流行や消費動向を完璧に予想することは不可能であるので、適切な量を仕入れたと思っても、結果として売れ残ることはある。従って、実際に売れ残りが毎年発生することは必要悪とも言える。問題はSDGsの観点から、そういった売れ残った大量の在庫を全て廃棄する前にできることは何もないのであろうかということである。

◆商品を廃棄する前に消費者へ
 他社の店舗や倉庫にある大量の商品在庫を一括で買い取る業者が世の中には多数存在する。そういった業者に在庫を一括で販売することは可能であり、一番簡易な手法でもある。そういった業者は、大量の在庫を引き取ってくれる代わりに、一般的に買取価格は二束三文で非常に安くなる。そのため、販売する側にとっては、損失を極小化したり、販売で得られる現金の極大化したりすることを狙うというよりは、価格は安くてもよいので早期に在庫を一掃することで在庫の保管費用を削減することが主な目的となる。また、こういった業者に全ての売れ残り在庫を引き取ってもらったとしても、この業者が買い取った在庫を全て消費者に販売し切るというわけではなく、一定量は結局廃棄されてしまうのも事実である。

 本当の意味で廃棄を減らすには、なんとかして消費者に在庫を買ってもらい、在庫が消費者に届くことが必要である。一つの方法はシーズンが過ぎて売れ残った在庫を別にセールで販売するという方法がある。シーズンが過ぎたキャリー品として、値引きする理由を明確にすることで他の商品のブランド価値を傷つけないようにするのである。また、閉店する店舗を用いて値引き販売をすることも大量の在庫を消費者に購入してもらい、廃棄を減らす有効な手段である。これは、閉店するので、在庫をなくしたいから値引き販売をするという明確な理由があるからである。しかし、閉店セールであっても、全品を売らなければ、売れ残り在庫を抱えることになってしまう点は留意が必要である。

 また、最近ではEコマースと呼ばれるインターネット販売も有効である。こういったサイトには参加者がメンバーに限られるクローズドなサイトと、参加者の制限が余りないオープンなサイトもあり、用途に応じて使い分けることが可能である。

 商業施設の一角を借りて、催事を行なったり、正規の商品を販売している店舗の商圏から離れたところでアウトレット店を開いたりすることでも、消費者への販売、廃棄の減少に繋がる。海外に持っていって販売することも可能であるが、この場合は移送費用がかかる点に注意しなければならない。

 こういった販売手法を駆使し、全品を消費者に販売するのは相当のノウハウが必要になり、人員、時間を要するので、自社で行うことが難しい場合は、外部の専門家のアドバイスを求めるケースも多い。生産された商品在庫が様々なルートを通じて最終的には消費者に渡ることで、廃棄の削減により、持続可能な社会の一助となることが望まれる。

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著者:堀内 秀晃(ほりうち ひであき)
1987年京都大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。1991年より2005年まで同行ニューヨークにて勤務、与信審査、シンジケーションを担当、部門長として、事業再生、問題債権処理並びにDIPファイナンス等の再生ファイナンスを手掛ける。2005年に帰国後はプライベート・エクイティ・ファンドの投資を担当。2007年より2015年までGEキャピタルにて、Asset Based Lending(ABL)を用いた事業再生ファイナンスを担当、米国型ABLを日本に導入する。2015年よりゴードン・ブラザーズ・ジャパンにて動産の評価、融資、換価案件のソーシングを担当、マーケティングの責任者。
事業再生実務家協会理事
大阪大学大学院高等司法研究科 招へい教授(2016年度)

Text by Hideaki Horiuchi