食をめぐる問題 2

© Yumiko Sakuma

 まずひとつに、ヴィーガニズム(絶対菜食主義)というのは哺乳類の肉や魚介だけでなく、蜂蜜、卵なども含めて動物性のものをいっさい食べないという考え方。ヴィーガニズムの中にも、食生活だけでなく革製品など動物を商品化することを拒絶する「エシカル・ヴィーガニズム」、食事に限って菜食を実践する「ダイエタリー・ヴィーガニズム」、そして、環境上の理由で動物性のものを消費しない「エンバイロメンタル・ヴィーガニズム」があるということ。ヴィーガニズムほど厳格ではないが、菜食主義(いわゆるベジタリアン)の中にも、最近ではそれを「プラント(植物性)ベース」と呼ぶ人たちがいるということ。そして、肉食と決別する道を選ぶ理由も多様なのである。

 私の場合は、ショッキングな映画を見てやめてみた結果、自分の体調がよくなってしまったという健康上の理由だったわけだが、動物愛護の見地から肉をやめる人もいれば、ファクトリー・ファーミングの現状を知って肉をやめる人もいる。そして今増えているのは、環境破壊の現状を理由にプラント・ベースの食生活に切り替える人たちだ。

 昨年、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発表した「Global Warming of 1.5℃(1.5度の温暖化)」と題したレポートは、気候変動によって引き起こされる食糧不足や山火事などが、これまで考えられていたよりずっと深刻なことを明らかにした。また、その状況を特に悪化させている主因として特に、温室ガス排出全体の14%を占める、車、鉄道、飛行機による輸送にかかるエネルギー消費と、その5%を占める、牛を中心にした家畜の生産について指摘した。となると、家畜の生産は輸送による環境ダメージの3分の1程度になると思ってしまうが、国連食糧農業機関(FAO)は、食肉の加工や輸送までをも考慮すると、畜産業による温室ガス排出は、交通輸送によるエネルギー消費とほぼ同様のレベルに達する指摘している。裏を返せば、人間たちが肉を食べる行為を減らし、肉の生産量を減らせば、急速に進む温暖化の緩和に貢献できる、ということになる

 環境破壊を理由に菜食を実践する人たちが増えている背景には、こういう現状や考え方がある。他方、100%の菜食を実践することが難しいという人たちには、「ミートレス・マンデー」の実践が推奨されている。2000年代前半から提唱されるようになったこの考え方は、世界の全人口が週に1度でも肉を食することをお休みすれば、温暖化を緩和できるのではないかという考え方に基づいている。(続く)

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Text by 佐久間 裕美子