ジュリアーニ氏だけではない、トランプ氏弁護士の転落劇

Mary Altaffer / AP Photo

◆資格はく奪処分を受けたトランプ氏の弁護士
 ジュリアーニ氏はまだ弁護士資格を完全にはく奪されたわけではないが、今後その流れになるということは想像に難くない。敏腕連邦検事として活躍した後にニューヨーク市長となり、2001年9月11日のテロ事件後は「アメリカの市長」として愛されたこともあるジュリアーニ氏の転落は、当時からすれば想像しがたい。しかし、トランプ氏の弁護士として弁護士資格はく奪(または停止)の憂き目に遭ったのはジュリアーニ氏だけではない。

 CNBC(電子版)によると、奇しくもジュリアーニ氏の弁護士資格停止処分が決定した24日は、1970年代~80年代半ば、トランプ氏の弁護士として知られたロイ・コーン氏(1986年没)が弁護士資格をはく奪された日とまったく同じである。コーン氏の従弟であるデービッド・マーカス氏がUSAトゥデイ(電子版)に執筆した記事によると、トランプ氏は、攻撃的な弁護士として恐れられていたコーン氏から「否定する、(話や責任を)そらす、混乱させる」という手法を学んだという。マーカス氏によると、コーン氏とトランプ氏が会ったのは1973年で、トランプ氏が黒人住民を差別したとして、米司法省から公正住宅取引法違反で訴えられていた際だった。その後、コーン氏はトランプ氏の専属弁護士を務めたが、1986年にニューヨーク州最高裁より詐欺などの理由で弁護士資格をはく奪された。

 その後、トランプ氏の専属弁護士として、訴訟などさまざまなトラブルの「フィクサー(始末する人)」となったのがマイケル・コーエン氏である。米司法省によると、コーエン氏は選挙資金法違反や脱税、偽証など8つの罪状で有罪判決を受け、その後2019年に同じくニューヨーク州最高裁に弁護士資格はく奪の処分を受けた。コーエン氏はその後トランプ氏と縁を切り、トランプ氏に関する暴露本を出版。現在はニュース番組の政治コメンテーターとして活動している。
 
◆「縁切り」が功を奏したバー前司法長官
 さて、弁護士資格はく奪処分は受けていないが、最近トランプ氏と縁を切った弁護士がもう1人いる。トランプ政権で司法長官を務めたウィリアム・バー氏である。

 トランプ氏は在任中、司法省を個人的な私有機関のように扱っていた。最近では、同氏が「政敵」とみなしていた民主党のアダム・シフ下院議員やエリック・スウォルウェル下院議員などの電話や電子メール記録を不正に集めていたことが明るみに出ており、それを指揮していたのはバー氏ではないかという疑いもあるため、早くトランプ氏との縁を切りたかったのかもしれない。

 27日にアトランティック誌(電子版)に掲載された「ウィリアム・バーのトランプとの破局の中身(Inside William Bar’s Breakup with Trump)」と名付けられた記事では、2020年11月のトランプ氏の敗北後、同政権の最期に、2020年の大統領選で「結果を変えるような、広範囲にわたる不正はなかった」と公言したことでトランプ氏の恨みを買い、任期満了を待たずに辞職した件の詳細が綴られている。記事によると、バー氏は「もし不正の証拠があれば、それを抑えるようなことはしなかった。しかし、私は不正の証拠など存在しないという疑惑を抱いていた。これ(トランプ氏の不正主張)は全部デタラメだったのだ」と述べたという。

 昨年のうちにトランプ氏に反旗を翻し、辞職した自分自身の判断を、バー氏はいま、心から喜んでいるに違いない。最後までトランプ氏をサポートし、虚偽の発言を繰り返して、ついに資格停止処分を受けたジュリアーニ氏の転落劇とは明暗を分けた形だ。

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Text by 川島 実佳