ベラルーシの「国を挙げてのテロ行為」はなぜ起きたのか 反体制派の記者逮捕の背景

2017年3月にミンスクで拘束された際のロマン・プロタセビッチ氏|Sergei Grits / AP Photo

◆死刑の可能性
 今回ギリシャからビリニュスに向かっていたライアンエア旅客機は、ベラルーシ上空に差しかかったとき、偽の爆弾情報を理由に、一番近い空港であるミンスクに着陸することになった。ベラルーシ当局は、爆弾情報は旅客機側から来たと言っているが、ライアンエア側は、ミンスクから危険があるので迂回するようにコンタクトされたと述べる。また、ルカシェンコ大統領が戦闘機MiG-29を差し向けるよう命令したという情報もあり、いずれにせよライアンエア機は、いわば強制的にミンスクに着陸させられたと見られる。(フランス・アンフォ、5/23)

 同機に乗り合わせた乗客の一人、アルチュールによれば、ビリニュスまであとわずかというところで同機がミンスクに向かうと知ったとき、プロタセビッチ氏はひどい動揺を見せたという。別の乗客のモニカは、同氏がほかの乗客らに向かって「死刑になるかもしれない」と発言したと明かしている。(フランス・アンフォ、5/24)

 いち早く同事件についてベラルーシ当局を非難したチハノフスカヤ氏も、そのツイートのなかで、プロタセビッチ氏が死刑となる可能性を述べている。ベラルーシは欧州で唯一死刑を廃止していない国なのだ。

◆世界の批判と制裁
 この事件には、欧州をはじめ世界から批判が相次いでいる。プロタセビッチ氏の亡命先のリトアニア大統領は「卑劣な行為」と呼び、ポーランドは「国を挙げてのテロ行為」だと発言。フランス外相は23日夜、在仏ベラルーシ大使フィッセンコを召喚した。(ル・モンド紙、5/23)

 翌24日、EUはベラルーシの航空機のEU上空の飛行を禁止し、またEU27ヶ国の航空機にはベラルーシ上空の航行を避けるように要請した。EUは、すでにルカシェンコ大統領を含む88人の政権関係者らに、EU圏への移動の禁止と資産凍結という制裁を施しているが、これに加えさらなる経済措置も検討中だ(フランス・アンフォ、5/24)。ただし、EUの制裁によってベラルーシがロシアに近づいたという経緯もあり、慎重な判断が必要とされるであろう。

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Text by 冠ゆき