映画『ホテル・ルワンダ』モデル、テロ容疑で逮捕の背景とは

法廷に立つルセサバギナ氏(2月26日)| Olivier / AP Photo

 昨年8月、ルワンダの首都キガリにある高級ホテル「ホテル・ミル・コリンズ」の元支配人で、政治活動家のポール・ルセサバギナ(Paul Rusesabagina)が逮捕された。1994年のルワンダ虐殺で1200人以上の命を救ったことで知られるルセサバギナは、近年はベルギーと米国を拠点にカガメ政権を批判する活動家として生活していたが、昨年母国にてテロ容疑で逮捕された。先月、裁判が開始。「英雄」から容疑者となったルセサバギナのストーリーとは。

◆『ホテル・ルワンダ』で認知拡大
 2004年公開の映画『ホテル・ルワンダ』のモデルとなったホテル・ミル・コリンズは、1994年当時におけるルワンダの最高級ホテル。1994年のルワンダ大虐殺が起こった際、ルセサバギナは自分のホテルで避難していた1268人の命を守ったことで知られている。彼は、ホテルを襲撃に来た過激派との交渉を試み、最終的にはホテルの葉巻や高級ウィスキー、金庫に保管されていた現金と引き換えに過激派の侵入と攻撃を食い止め、ホテルにいた人々と自分の家族の命を救った。

 彼の物語がモデルとなった『ホテル・ルワンダ』の世界的なヒットにより、ルセサバギナの功績は世界的に認知された。2005年には、その勇気と慈悲の姿勢が認められ、米国で民間人に送られる最高位の勲章である大統領自由勲章(Presidential Medal of Freedom)が、ジョージ・W・ブッシュ大統領からルセサバギナに授与された。ルワンダ虐殺の後、家族とともにベルギーに亡命していたルセサバギナは当時、タクシーの運転手をしていた。その彼が、ホワイトハウスに招待された米国最高位の勲章を与えられ、世界でもっとも知られるルワンダ人となったのだ。

 その後、ルセサバギナはタクシーの運転手から講演者へと転身し、世界各国で講演活動を開始した。また、ホテル・ルワンダ・ルセサバギナ基金を立ち上げ、平和構築のメッセージを発信。さらに、2006年には自伝『ホテル・ルワンダの男(An Ordinary Man)』を出版した。虐殺に至った民族対立の背景にある植民地支配の歴史、100日間の虐殺の物語が改めて伝えられた。一方、自伝には、カガメ大統領が率いるルワンダ政権は本当の民主主義ではなく、少数派のツチ族のための専制政治であると政府を強く批判する内容も書かれていた。ちなみに彼自身はフツ族で、妻はツチ族の出身だ。

Text by MAKI NAKATA