ベラルーシの「国を挙げてのテロ行為」はなぜ起きたのか 反体制派の記者逮捕の背景

2017年3月にミンスクで拘束された際のロマン・プロタセビッチ氏|Sergei Grits / AP Photo

 ギリシャ・アテネからリトアニアのビリニュスに向かっていたライアンエアの旅客機が23日、ベラルーシの首都ミンスクに緊急着陸させられ、乗っていたベラルーシ人ロマン・プロタセビッチ氏が逮捕された。この「国を挙げてのテロ行為」には世界から非難の声が集まっている。昨年の大統領選からこの事件に至るまでの経緯を振り返る。

◆2020年大統領選をきっかけに弾圧激化
 アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は2020年8月9日、選挙で6期目の「当選」を果たした。だが、この選挙には不正の疑いが濃い。26年間独裁者としてふるまってきた同大統領は、選挙運動中の5月から大統領選に立候補したセルゲイ・チハノフスキー氏や、反大統領派であるミコラ・スタトケビッチ、ビクトル・ババリコ氏らを次々に拘束したからだ。

 拘束されたチハノフスキーの妻、スベトラーナ・チハノフスカヤ氏は、夫の代わりに立候補したが、ルカシェンコが80%の票を得て当選。これを不正とみなす何万もの市民が抗議のデモを行った。シンボルとして用いられたのは、白地に赤い横線の入ったベラルーシ人民共和国の古い旗だ。だがこの平和的なデモに当局は力で対応した。9月の段階ですでに反ルカシェンコの逮捕者は数千人に上り、拘束者は拷問を受けた。(ル・モンド紙、9/13)

Text by 冠ゆき