イギリス揺るがす首相顧問の違反外出 「陰の実力者」カミングス氏とは

Jonathan Brady / Pool via AP

 新型コロナウイルスパンデミック渦中のイギリスで、先週来、メディアを連日騒がせている名前がある。それはドミニク・カミングス、現在ボリス・ジョンソン首相の上級顧問を務める男性で、2016年のEU離脱の是非を問う国民投票の際には、ジョンソン氏と組んで離脱キャンペーンを成功させた事で知られる。政権を陰で操る存在ともいわれている彼が、国内メディアをいまなぜここまで炎上させているのか。

◆ロックダウン中、妻子を連れ400kmを超すドライブ
 英ガーディアン紙デイリー・ミラー紙が報じた5月22日の記事によると、イングランド北東部のダラム警察が3月31日、通報により、カミングス氏が同市内で自己隔離している事を確認。ロンドンの自宅から264マイル(約410km)離れた同市にある両親宅を自ら運転し滞在していたという。さらにその後の4月5日、近所の住民が、カミングス氏が屋外でABBAのダンシングクイーンを大音量でかけ、子供といるのを目撃していた。

 カミングス氏とその妻で英スペクテイター紙記者メアリー・ウェイクフィールドは後日スペクテイター紙に、その頃、妻にまず新型コロナ感染の症状が現れ、追って発症したカミングス氏も呼吸が困難になるほどに悪化していた旨を書いており、とくに妻の記事にはロンドンにいた事を思わせるような記述があった。

 上述の2紙は、これらは、同居していない家族を、買い物や薬を届けるなどの支援以外の目的で訪問する事を禁止する法律が3月26日に施行された以降の事であるとし、政府の要人のダブルスタンダードを追求する内容であった。

 さらに24日には、オブザーバー紙サンデー・ミラー紙が、4月14日にはロンドンの首相官邸で働いているのを確認されていたカミングス氏が、同月19日に再びダラムで目撃されていたと報じた。

 同記事には、前回のダラム訪問時と思われる4月12日に、カミングス氏の両親宅から約50km離れた観光地リバー・ティーズにてカミングス氏一家を目撃したという人物のコメントも載せられていた。

 一度のみならず二度にも渡りロックダウンを無視し、観光までしていた事実が明るみに出て、他メディアも追随するかたちで一斉に同件について追求し出し、現在に至っている。カミングス氏に関する記事が一面を占める新聞は多く、その進退をも問う論調のところも少なくない。この蜂の巣をつついたような騒ぎのなかに、浮かび上がるものがある。

Text by Tamami Persson