豪シドニー、アスベスト汚染 公園、学校、病院60ヶ所以上に拡大

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 1970年から1990年代に建築物の耐熱性や防音性を高める効果のある資材として使用されていたアスベスト(石綿)。肺がんや中皮腫などの肺疾患を引き起こす可能性があるといわれ、日本や欧州などでは使用が禁止されている。そのアスベストが公園などの土の表面に敷くリサイクルのマルチ材に混入していたとして、オーストラリアのシドニーで大問題になっている。学校や病院などの公共施設でアスベスト汚染が確認され、一部施設が閉鎖される事態にまで発展している。

◆公園、病院、駅、学校60ヶ所以上 汚染深刻
 シドニーの公園で1月に、アスベスト(石綿)に汚染された土壌の表面に敷くリサイクル・マルチ材が発見されて以来、市内60ヶ所以上でマルチ材のアスベスト汚染が確認された(豪公共放送ABC、2/26)。

 公立学校4校を含む数百ヶ所が2月時点で検査の対象になっている。マルチ資材はグリーンライフ・リソース・リカバリーという製造業者が供給していることが判明した。アスベスト汚染の拡大を受け、ニューサウスウェールズ州政府と環境監視委員会は、調査のためのタスクフォースを立ち上げた。

 市内でリサイクル・マルチ材に含まれるアスベスト検査が開始した1月以降、陽性反応が出た場所は、公園や病院の敷地、駅、スーパーマーケット、4つの学校などが含まれ、うち2つは一時閉鎖された。この騒ぎによって、何千人もの生徒が自宅に待機した。シドニー・オリンピック・パークでは、テイラー・スウィフトの2月23日からの公演開催直前に敷地内のマルチに汚染リスクがあるとして当局が検査を行ったこともあり、国際的に注目された。検査はすべて陰性だった。

 アスベスト汚染騒ぎの発端は、1月初旬に子供がシドニーのロゼル・パークランド公園から土を自宅に持ち帰ったことだった。子供の親がマルチの中にアスベストらしき塊があることに気づき、それを検査に出したところ、陽性反応が出た。市当局が同公園一帯の土を検査した結果、アスベストが確認された。問題を受け、州環境保護庁(EPA)が過去数十年で最大規模の調査を実施し、市内32ヶ所で結合アスベストを検出した。

 EPAによると、アスベスト廃棄物のリサイクルを許可した企業や個人には、最高200万豪ドル(約2億円)の罰金を科す。ミンズ州首相は、罰金の引き上げを検討するとしている。(ニューヨーク・タイムズ、2/18)

 州当局によると、マルチから発見されたアスベストの大半はコンクリートのような別の物質と混合されているため、簡単に砕けたり粉塵になったりすることがない。そのため、簡単に砕けて吸い込む飛散性アスベストよりも危険性は低いとしている。

 アスベストの繊維を吸い込むと、アスベスト症、肺がん、中皮腫などの肺疾患が発生するリスクがある。オーストラリアは1980年代にアスベストの段階的な使用禁止、2003年に完全に禁止した。1990年代以前に建設された住宅の多くは、いまだにアスベストを含んでいる。アメリカは禁止していないが、欧州連合(EU)は2005年にすべての使用を禁止した。

Text by 中沢弘子