台湾の歴史的ビジネス街・迪化街、挑む「保全」と「生活」の絶妙なバランス

迪化街の最北端にある「迪化街十連棟」。観光スポットであるとともにオフィスや小売店が2階に並ぶ(筆者撮影)

◆間口は狭いが奥行きが深い特徴的な建物
 装飾や窓枠にデザイン性を帯びた「バロック調の洋館建築」から、中国に起源を持つ赤レンガ造りの「閩南式(びんなんしき)建築」の建物など、大稲埕地区の中心に位置する迪化街には、数種の建造物が乱立するアーケードが1キロ以上続く。いずれも清朝後期から、日本統治時代に建設された建物で、すでに50年を優に超える。

 大稲埕に立ち並ぶ建物の特徴は、間口は5〜5.5メートルと、車1台半の幅しかないが、入り口からぐっと奥に伸びており、長いところでは50メートルも奥行きのある建物もある。

 街全体の特徴として挙げられるのは、建物の1階部分をセットバックさせることで、半屋外の歩行者が歩ける空間を生み出した「騎楼(ベランダ)」と呼ばれる造りだ。これが連なるおかげで、アーケードになっており、雨風が凌げる仕組みになっている。建物の素材の多くは、石造りやレンガでできており、元々は長屋造りで壁も共有していた。

セットバックされた「騎楼」。各家の間口の広さは、床の違いから判断できる(筆者撮影)

 また構造面では「三進式」という奥行きのある建物を、3つのパートに区切っている点が特徴的だ。具体的には、一進が手前のメインストリートに面した場所。二進が中央、三進が裏路地に面した場所となる。それらを天井(ティエンジン)と呼ばれる中庭でつなぐのが、伝統的な台湾の町屋形式の建物だ。

台北市政府ビル内にある「台北探索館」には、
大稲埕地区の三進構造について詳しい地図や模型が並ぶ(筆者撮影)

Text by 寺町 幸枝