研究で明らかになる「ワーカホリック(仕事中毒)」の負の側面

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◆量をこなしても喜びは増えない 研究で判明
 イタリアのボローニャ大学のクリスティアン・バルドゥッチ教授らの研究チームは、139人のフルタイム労働者を対象に調査を行った。最初に参加者の仕事依存度を心理検査で評価。その後、アプリを利用した自己申告により、1週間を通じた労働者の気分と仕事量に対する認識を分析した。

 その結果、最も重度のワーカホリックである従業員は、それ以外の人よりも概して不機嫌であり、仕事をすることでより多くの喜びを感じているというのは事実ではないことがわかった。この傾向は時間の経過や仕事量の多寡によって変わらなかった。研究の筆頭著者であるトレント大学のルカ・メンディーニ氏は、仕事への没入を抑えられないというワーカホリックの特徴が関係していると見ている。この研究では、ワーカホリックの場合、仕事をしているときでさえ体調が悪く、そのせいで死ぬ可能性もあるとしている。

 フェルナンデス氏の研究チームは、たとえ仕事が好きな従業員でも、過剰な労働では活力源は枯渇すると指摘。結果的にエネルギー、幸福感、思い入れのレベルが低下し、不安、抑うつ、過労のレベルが高くなるとしている。これらがさらに健康問題、欠勤、「静かな退職」と呼ばれる必要以上に働かないスタイルへの移行につながることも予想されるという。サイコロジー・トゥデイは、ワーカホリックは真の「依存症」とはみなされないが、場合によっては過剰な飲酒や喫煙と同じ程度の破壊力を持つ可能性があるとしている。

◆「バランス」より「ブレンド」? 環境見直しも必要
 バルドゥッチ教授の研究チームは、雇用者がワーカホリックについて従業員に明確な注意を与え、業務時間外や週末での労働が当たり前とみなされるような環境を作らないことを解決策の一つとしている。

 フェルナンデス氏らの研究では、長時間労働でも仕事を楽しんでいる従業員は、仕事関連のストレスに悩まされることが少ないという結果が出ている。人は働くために生きるのではなく、生きるために働いていることを考えれば、幸せな中庸を見つけることが重要で、「ワーク・ライフ・バランス」というより、仕事とプライベートを融合させて人生を楽しむ「ワーク・ライフ・ブレンド」が当てはまるのではないかとサイコロジー・トゥデイは述べている。

Text by 山川 真智子