mRNA研究者にノーベル賞 かつて冷遇した米大学に批判の声も

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◆ペンシルベニア大学への批判の声も
 ノーベル賞受賞にあたり、カリコとワイスマンはペンシルベニア大学と共同で記者会見を行った。しかしながら、ペンシルベニア大学の祝福メッセージに対しては、批判の声も上がっている。過去にカリコを研究者として降格させ、結局、彼女はビオンテックに転職せざるを得なかった。彼女は現在もペンシルベニア大学で教鞭を取っているものの、終身雇用につながる教授の立場ではなく、非常勤講師という立場である。カリコに対して、きちんとした待遇を与えてこなかったにもかかわらず、彼女が大きく貢献した研究を、大学の手柄のように打ち出すのはおかしいというのが、ほかの研究者らからの批判として上がっているようだ。カリコの待遇などに関して、ペンシルベニア大学からは特に謝罪やコメントは出ていない。

 また、ペンシルベニア大学は、カリコとワイスマンの研究成果であるmRNA技術に関して、大学が保有する特許を通じて、ファイザー・ビオンテックとモデルナから10億ドル近くのロイヤリティーを受け取っている。mRNA技術を活用した新たなワクチンが開発されれば、今後も大学はロイヤリティー報酬を受け取ることができる。公的資金によって大学で研究開発された技術に関する報酬は、科学研究に再投資しなければならないことが連邦政府の法律で決められている。ペンシルベニア大学において新たな研究が促進されることは良いことだが、カリコとワイスマンが研究資金調達に苦戦した過去を考えると、皮肉な状況だとも言える。

Text by MAKI NAKATA