mRNA研究者にノーベル賞 かつて冷遇した米大学に批判の声も

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 20年間以上にわたりmRNAワクチンを研究してきたカタリン・カリコ(Katalin Karikó)とドリュー・ワイスマン(Drew Weissman)が2023年のノーベル生理学・医学賞を受賞。一方、カリコが在籍中には彼女の研究を評価しなかったペンシルベニア大学への批判の声も上がっている。

◆新型コロナのワクチン開発に貢献
 先日、今年のノーベル生理学・医学賞の受賞者が発表された。受賞理由は「新型コロナウイルスに対して効果的なmRNAワクチンの開発を可能にした塩基修飾に関する発見」である。カリコはハンガリー出身、ワイスマンはアメリカ出身の研究者。2人はペンシルベニア大学で出会い、1997年以降、共同で研究開発活動を行ってきた。フォーブスによると、大学内でのコピー機の奪い合いがきっかけで、たまたまお互いの研究についての会話を始めたという。カリコはmRNAに関する自身の実験研究を進めるための資金が枯渇していたが、ワイスマンの協力もあって研究資金を確保することができた。2人は2005年に、mRNAが新たなワクチン開発に応用できるという発見についての論文を発表し、その後、会社を立ち上げた。しかし、当時は論文がほとんど注目されることがなく、事業に関しても投資家探しに苦戦した。

 結局、カリコとワイスマンは彼らの技術を、当時はほぼ名の知られていなかったビオンテック(BioNTech)社にライセンスし、カリコはペンシルベニア大学の研究職を離れ、ビオンテックで研究開発を続けた。このmRNA研究こそが、ファイザー・ビオンテックとモデルナの新型コロナウイルスに対するワクチン開発の基礎となった。今回の受賞発表を受け、ペンシルベニア大学は「ペン大の歴史的なmRNAワクチン研究チームが2023年のノーベル医学賞を受賞」と高らかに称えた。カリコは、脳神経外科学の非常勤講師としてペンシルベニア大学に所属している。カリコとワイスマンは、起業家・発明家としても知られるアメリカ建国の父の1人、ベンジャミン・フランクリンが設立した大学において、28番目と29番目のノーベル賞受賞者となった。

Text by MAKI NAKATA