男性にもっと家事参加してもらうためのアプリ、スペイン政府がリリースへ

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◆家事の分担はいまだ平等ならず
 ところがそんなスペインにおいても、国立統計研究所が2022年12月に発表した調査によれば、いまだ家事の大部分を担うのは女性だ。しかもその差は大きく、女性が45.9%なのに対し男性は14.9%に過ぎない(20minutes紙、5/25)。

 スペイン政府はこの調査結果を受けて「世帯内での家事分担を監視するアプリケーション」の開発を決め、ジュネーブで催された国連女性差別撤廃委員会にて発表した。夏までにリリース予定のこのアプリでは、掃除、洗濯、料理といった家事に加え、食材の購入など家庭外でする作業や、食事内容のプランを立てるなどの精神的負荷も考慮される予定だ。

 このニュースにスペインでも賛否両論が巻き起こっているようだが、男女平等省のアンヘラ・ロドリゲス氏らは、「家事という仕事や精神的負担が、ほぼ常に女性に課せられる」ことを是正するためにも、「家族メンバー各々に必要な労働時間をより適切に可視化する」アプリ導入には意義があると擁護している(エル誌、5/25)。

◆多種多様なフランス人の反応
 このニュースに対しては、フランスでも多くの意見がネットに書き込まれている。「すばらしい! スペインは男女平等に関しては進んでいる」という意見は今のところほとんどなく、「大体において男女の求める清潔さは異なるんだから、気になる方が掃除するのは当然」「うちではちゃんと分担しているよ。僕が汚して、彼女がきれいにするんだ」といういささかマッチョな意見や、「人生には家事よりも大切なことがあることを忘れちゃいけない」と家事自体に重きを置かない書き込みが目についた。また「結論を言えば、別々に暮らし、時々会っていいとこ取りするのが一番ってことだね」「だから独身のままでいたい女性が増えているんだよ」という具合に、同居生活自体を否定する声や、何でもかんでもアプリで解決する昨今の風潮を揶揄(やゆ)する声も少なくない。(20minutes紙、5/25)

 2021年の調査によれば、フランス人の70%が、家事に関する口論が原因でパートナーと口を利かなくなった経験があり、回答者の2%はそれが原因で離婚したと答えている(20minutes紙、5/25)。フランス人にとっても家事分担問題は他人事ではないはずだが、上の書き込みを読む限り、真剣に分担の必要性を考えている人は多くなさそうだ。

 「男女平等先進国」スペインでは、家事をすべてこなしていた別れた妻に20万ユーロを支払うよう離婚男性に命じる判決を出ており、家事の価値は社会的にも認識され始めている。アプリの誕生はスペイン人の家庭生活をどう変えるのか? 大いに注目したい。

Text by 冠ゆき