暑くなるとSNSのヘイトスピーチ増加 気候変動に影響される人間の行動

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◆オフラインへも影響
 オンラインでの攻撃的な行動は、オフラインの暴力に結びつく。ニューヨークに本拠を置くシンクタンクである外交問題評議会によると、ネットのヘイトスピーチは、銃乱射事件、リンチ、民族浄化など、マイノリティに対する暴力の世界的な増加につながっている。

 またPIKの研究によると、暑さは精神科への入院、自殺率の増加、家庭内暴力の増加とも関連している。誰にでも、その日の天候や気温で気分が浮き沈みしたり、梅雨の時期に落ち込み気味になってしまった経験はあるだろう。異常気象やあまりに暑い日にはイライラしてしまうなど、私たちの日々の行動に何らかの影響があるのは当たり前ともいえる。

 PIKの論文によると、ソーシャルメディアでの標的を絞った攻撃は、不安、うつ病、自傷行為などメンタルヘルスに影響を与えることが示されている。オンラインハラスメントの影響に関する心理学的調査によると、ヘイトスピーチの被害者はオンラインサービス全般を安全ではないと感じ、オンラインのサービスや機会から取り残されるという。オンラインで攻撃された経験のある10代は、学校で問題を抱えたり、オフラインで非行的な行動を取ったりする可能性が高くなる。また、オンラインでのヘイトスピーチは、オフラインでのヘイトクライムの前兆にもなる。

◆原因と言動への影響
 気候変動は地球の健康や、外部的な要素である食糧不足や住居困難などに留まらず、私たちの言動にも大きな影響を与えている。自分では気づいてなくても、無意識のうちに影響を受けている場合もある。気温によって自身がより怒りっぽくなったり嫌悪感を抱いたりする可能性があることを知っておくだけでも、感情のコントロールが容易になるかもしれない。そして何よりもまず「地球温暖化を止めることが最も明白なアプローチである」とステケメッサー氏も述べている(ブルームバーグ)。

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Text by sayaka ishida