「ウクライナの戦術、市民を危険に」アムネスティが批判「住宅街に軍事拠点」

ウクライナ東部ドネツク州ポクロフスク、8月4日|David Goldman / AP Photo

◆犠牲者叩き? 真実無視だと宇側反論
 報告書の内容に対しウクライナ側は猛反発している。ゼレンスキー大統領は、責任を加害者から被害者に転嫁する試みだと主張。自国への攻撃は不当な侵略かつテロ行為であり、被害者のデータばかりが分析され、その時の加害者の行動が無視されるのは容認できないとした。(テレグラフ紙

 ウクライナのクレバ外相は、アムネスティの行為は世界に真実を伝えるのではなく、何十万人もの市民、都市、領土全体を破壊する犯罪者ロシアと、その猛攻から国民と国土を必死に守ろうとする犠牲者ウクライナとの間に誤ったバランスを作り出すものだと主張。当事者双方を批判し、誰もが少しだけ罪を犯しているという偽りの真実を作ることはやめてほしいとした。(ウクライナ通信社ウクルインフォルム

 アムネスティ・ウクライナのポカルチュク事務局長は、この報告書の作成にウクライナ事務所の関与はなかったと自身のフェイスブックでコメント。同僚の外国人によってまとめられた不完全な証拠に基づいて作られたものだと訴えたところ、報告書出版前のプロセスから排除されてしまったと事情を説明している。出版を止めようと手を尽くしたが、聞き入れられなかったということだ。

◆違法とは言えず? 理想と現実の差も
 英グリニッジ大学のスティーブン・ヘインズ教授は、紛争時の学校や大学の軍事利用に関する法的拘束力のないガイドラインを作成しており、ウクライナを含む100ヶ国の支持を得ている。同氏によれば、学校を使用することは本来の目的以外であっても常に違反というわけではなく、ウクライナの場合も必ずしもガイドラインを破っているとは言えないという見方を示した。英ガーディアン紙の記者は、学校が家を失った人々のための避難施設や支援センターとして使われている事例を確認したという。(ガーディアン紙

 さらにヘインズ教授は市民の巻き添えを避けるべきというアムネスティの評価には同意するとしたが、侵略の性質上、ウクライナでは市街戦が不可避になっていると指摘。人口密集地は戦争の対象にはならないという理想的なシナリオとは違うという考えも示している。(同)

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Text by 山川 真智子