中絶のために他州に行くと逮捕される? バイデン大統領は州の動きを予測

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 ハフポストによると、中部の保守州ミズーリ州では今年3月、「ロー対ウェイド」判決が覆される前にすでに同州議会の女性議員が、州民が中絶手術を受けるために他州に行くことを禁止しようとする法案を提出。禁止州では何とか越境を阻止しようとする姿勢が伺える。ロイターによると、バイデン大統領自身も「州境を越えて医療サービス(この場合は中絶)を受けようとする女性たちを最初の州が逮捕しようと試みたら、人々はショックを受けるだろう」「皆そんなことは起こらないと思っているかもしれないが、それは起こるだろう」と悲観的な見解を示している。

◆他州への移動制限は憲法違反
 しかし中絶手術をするために他州に移動することを禁止するのは移動の自由を制限することにつながるため、簡単に可能なことではない。USAトゥデイによると、共和党重鎮のチャック・グラスリー上院議員は「我々は人々が好きな場所へ行くことを阻止できない」「それは憲法と自由の問題だ」と話した。共和党議員がそう話すということは、少なくともしばらくはこれが本格的に問題化することはなさそうだ。

 だからといって共和党州が今後それを法案化しようと試みないかといえば、決してそうではないだろう。「ロー対ウェイド」判決が覆されたいまとなっては、2022年中間選挙で共和党が上下両院で過半数を奪えば、全国的な中絶禁止法案が提出されることもあり得る。事実、敬虔なキリスト教徒であるマイク・ペンス前副大統領はそれを目指していることを明確に示している。アメリカ人女性の生殖の権利が、今後の選挙結果によって大きく左右されることはまず間違いなさそうだ。

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Text by 川島 実佳