中絶の権利を憲法に、仏で動き 米最高裁の中絶判断受け

Grand Warszawski / Shutterstock.com

 アメリカで6月24日、「ロー対ウェイド判決」が覆され、すでに複数の州が中絶禁止を再導入した。なかには、レイプや近親相姦による妊娠の中絶さえ禁止した州もある。この展開に危機感を感じた国では、中絶の権利を再確認する動きが出ている。

◆米最高裁の判断を受けて欧州で動き
 ルクセンブルク議会では、妊娠の自発的な中絶は合法であるという原則を再確認する決議が行われ、56対4で採択された。同国の議員のなかには、もう一歩進んで女性の自由な選択が憲法で保障されるべきだと考える者もいる。(RTL 5minutes紙、6/28)

 中絶の権利を憲法で守ろうとする動きはフランスでも起こっている。与党LREMのベルジュ議員は、アメリカの最高裁判決翌日の6月25日に「憲法上に中絶の尊重を含むための法案」の作成を発表した。また左翼政党連合も6月27日、「妊娠の中断の基本的権利を保護するための憲法案への署名」を議員らに呼びかけた。

◆法律の意外な脆さ 絶え間ない闘争
 憲法で中絶の権利を守ろうとするのは、法律の修正が、議会の過半数の投票さえあれば可能であるのに対し、憲法の修正には、議会と上院の承認、さらに大統領の要請で国民投票の必要など、複雑な手続きが必要だからだ、とリール大学のヴァンデンドリシュ教授は説明する(20minutes紙、6/28)。つまり、議員の半数以上が賛成すれば、法律で定められた中絶の権利は簡単に覆される恐れがあるのだ。ベルジュ議員らはそれを恐れている。

 フランスでは、人工妊娠中絶の合法化は、1975年に発効されたヴェイユ法がもとになっている。これは、当時の厚生相シモンヌ・ヴェイユが提出し、国民議会で激しい反発と非難に晒されながらも可決させた法案で、文字通り闘い抜いて「勝ち取った」権利である。

Text by 冠ゆき